医学部&医者2021入試・カネ・最新序列#5Photo:Carl Court/gettyimages

1年半にわたる新型コロナウイルスのパンデミック。昨年は患者の受診控えや不要不急の手術中止・延期で減収の危機に陥った医者も多かったが、コロナワクチンバブルに沸く今年は様相が異なるという。特集『医学部&医者2021 入試・カネ・最新序列』(全21回)の#5では、一匹狼のフリーランス女医が医療界の矛盾に切り込む渾身のエッセーの前半部分をお届けする。

「コロナを診たのはごく少数」では
済まなくなった第5波の医療界

 私の職業はフリーランス麻酔科医。特定の職場を持たず、複数の病院で麻酔を担当して報酬を得ている。日本中がコロナ禍に翻弄された2年弱、マスコミではコロナ最前線の病院ばかりが報道され続けているが、それは医療現場のごく一部にすぎない。大学病院、地方公立病院、都心美容外科、へき地診療所……と多様な医療現場の内側を知る者として、マスコミではあまり報道されることのない、コロナ治療の最前線以外の現場にいる医師たちの言動を中心に伝えてみたい。

 2019年冬に中国・武漢市で新型コロナウイルス(以下コロナ)が発見されて2年弱、日本中の医療関係者はコロナ禍に翻弄され続けているが、20年春の第1波のとき、本当のコロナ患者を見た医師は実は少なかった。それよりも多くの医師が悩まされたのは「マスク・防御服・アルコール不足」「コロナ虚像にパニックになった者の対応」「一斉休校によるスタッフ不足」「紙とファクスが基本の非効率な保健行政システム」「患者の受診控えによる赤字」だった。

 しかし、過去最大の波となった今年夏の第5波では、私自身やっとコロナに対する報道と、現場での体感が一致したと認識している。さすがにここまで感染者が多くなると、コロナ治療の最前線にいなくてもあちこちの病院に患者がいるし、周囲でも「初めてコロナと対峙した実感を得た」と語る医師が多数派を占めるようになっている。