いつも同じパターンの采配
ベンチの判断で試合の流れを変えられず

 先制した試合でめっぽう強いのは、相手チームの事前分析に長け、その上で先発として送り出すメンバーを鼓舞するモチベーターの役割も果たしているからだ。

 対照的に、先制された試合で勝てないのは、ベンチの力で流れを変えられないからだ。ベンチの力とは、試合中のシステム変更であり、そして選手交代を指している。

 就任直後こそ複数を使い分けると公言したシステムに関しては、1人のフォワードの背後に3人の中盤を配置する[4-2-3-1]で固定されて久しい。

 だが、相手の変化や試合展開に応じて陣形を変える、臨機応変な采配が求められる状況でも、なぜか動かない。先制された試合のほとんどで、同じパターンが繰り返されている。

 必然的に、選手交代もシステムを変えず、疲れが見えた選手から代える形に終始する。自らの采配について、追加点を奪えなかった中国戦後に森保監督はこう語った。

「試合の終盤に向けてパワーを落とさずに戦おう、ということで選手を交代させた。最後に勝ちきるために、パワーを上げていくための交代のカードを切りました」

 ピッチ上で戦う選手だけでなく、監督を含めたベンチにもチェスや将棋のように駒を動かす戦いが求められる。采配が硬直化すればそれだけ勝利が遠ざかる。

 しかも、駒を代えるのが総じて遅い。象徴的な一戦が東京五輪の3位決定戦。前半だけで2点をリードされながら、後半開始とともに切った交代カードは1枚だけだった。

 これでは流れを変えられない。案の定、3点目を先にメキシコに奪われて万事休した。一か八かの手を打てない。勝負師になれない脆さはオマーン戦でも顔をのぞかせた。

 アジア最終予選は12カ国が2グループに分かれて、ホーム&アウェイで総当たりのリーグ戦を実施。それぞれの上位2位までが自動的にカタール行き切符を獲得する。

 グループ分け抽選は国際サッカー連盟(FIFA)が定めるランキングを基に行われた。グループBで日本は最上位の24位で、オマーンは5番目の79位だった。

 しかし、過去に9勝3分けの対戦成績を残していたオマーンを攻めあぐね、終了間際にまさかの失点を献上した展開で「5」の交代枠を「2」も余らせたまま敗れた。

 ベンチにいた攻撃的な選手を使い切っていた、という事情はあった。ただ、それを理由に挙げるのならば、招集した選手構成そのものがいびつだったと言わざるをえない。