何の武器も持たないまま、弾が飛び交う戦場の真っ只中に、ひとり取り残されたようなものです。もし、自分や自分の身近な人が、そのような状況に置かれたら、どれほど不安なことでしょう。

 こんなとき、手元に漢方薬があれば、最強の武器になります。実際に、ホテル療養となった人に対し、私が漢方薬で治療した事例もあります。それでは、PCR検査で陽性となった方が実際に自宅療養で使える漢方処方について紹介していきます。

無症状で自宅療養している場合

 PCR検査で陽性だったが無症状である場合は次の漢方を試してみてください。

【処方例】
・ツムラ補中益気湯(ほちゅうえっきとう)
1回2.5g、1日3回(朝昼夕)を7日分。これ以上飲みたいときには延長してもかまいません。

 無症状や軽症の人でも、急速に悪化する場合が少なくないのが、新型コロナウイルス感染症の恐ろしいところです。自宅療養では、パルスオキシメーター(指先の皮膚を通して動脈血酸素飽和度と脈拍数を測定する装置)は欠かせません。

 これの数値を、最低でも1日3回チェックして、93%以上(できれば96%以上)あることを確認し、もしそれより下がっていたら、夜中でもかまいませんので、保健所の担当者と必ず連絡を取ってください。保健所に連絡が取れないときは、近くの発熱外来を開設している病院に直接連絡します。朝まで待とうという考えは捨てましょう。

 パルスオキシメーターのチェックとともに、体温測定もこまめに行い、発熱が見られたら、胸部CT撮影で肺炎を起こしていないかどうかを確認することが必須です。この場合も、保健所や発熱外来、あるいは胸部CT撮影ができる医療機関に連絡を入れ、症状を伝えて受診してください。

 症状が急速に悪化すると、呼吸困難に陥って、自力で動けなくなります。スマートフォンの操作も難しくなります。一人暮らしの人は、親族や近隣に住んでいる友人・知人などに、自分がPCR陽性で自宅療養していることを伝えておき、もし連絡が取れなくなったら救急車を呼んでもらうように頼んでおくことも大切です。