銀行勘定系システムを日本で初めて米マイクロソフトのパブリッククラウド、Azure上に移行した石川県の地方銀行、北國銀行。他行がクラウドの導入すらもためらう中、杖村修司頭取は「将来は全ての銀行トランザクションをデジタル化し、地域のデジタル化を推進する業務にも参入する」と意欲を燃やす。まるで、これまで大手SIerが構築してきたレガシーシステムに別れを告げる大刷新だ。特集『不要?生き残る? ITベンダー&人材 大淘汰』(全16回)の#6では、銀行業界で初めてとなるシステム部長出身の頭取に、その壮大な将来絵図と、変わるITベンダーとの関係性について聞いた。(ダイヤモンド編集部 鈴木洋子)
勘定系は本当にオンプレでなければならないのか?
顧客起点で見直すべきだ
――銀行の勘定系システムは、常に稼働している必要のあるミッションクリティカルなシステムの最高峰です。その勘定系システムを日本の銀行で初めて、パブリッククラウドに移行するという決断をしました。
将来の銀行の在り方や役割はどうあるべきか、という議論を社内でずっとしてきました。銀行は戦後の高度経済成長期から「預金を決まった金利で融資し、とにかく量を稼ぐことが利益につながる」という経営モデルを長く続けてきましたが、それは大きく変えないと生き残れない。
今後お客さまとの接点が店舗からスマートフォンなどのIT機器に変わっていく中で、リアルとオンラインを掛け合わせた未来の銀行の姿を実現させるために大切なIT。その姿はどうあるべきか。DX(デジタルトランスフォーメーション)の前にまずはシステムモダナイゼーション(近代化)が必要で、その技術がパブリッククラウドありきになってきている以上、そのクラウド技術でシステムを変え、会社を変革していかないと、銀行自体が持たない――。このような議論を進めてきました。
クラウド活用というと「オンプレミス(自前保有)だとコストはかかるが、パブリッククラウドだとどれだけ安くなるんだ」とか「クラウドはセキュリティーとトレードオフだ」という議論しか世の中にはないようですが、そういう考え方ではありません。
そもそも勘定系をオンプレにする必要があるというのは、99.999%の可用性(システムが継続して稼働できる度合いや能力のこと。稼動率99.999%の精度を確保するには1年で5分ほどの故障しか許されない)が求められる、といわれてきたからです。
もちろん、オンプレのシステムでもどこかの銀行のように1年に7回も8回もダウンするような事態はあってはならないことですが、お客さまは本当に全てのサービスに99.999%を望んでいるでしょうか?
1桁9を増やすのにコストは10倍かかり、それはお客さまに跳ね返ります。本当に99.999が必要なシステムはどこか、はもっと研究していきたい。また今後1年以内にクラウドでの可用性を公表し、どんなレベルのサービスを展開しているかの実績をどんどん情報開示していきたいと思います。
――勘定系とその他のシステムを融合させるとなると、従来の銀行システムとはかなり大きく違うものになると思います。ITベンダーの選び方や付き合い方、人員、組織も大きく変わりますか?