「2021年もっともブレイクした人」と言っても過言ではない、ひろゆき氏。
彼自身、今のブームをどのように捉えているのか。どのような戦略があったのか。
また、今後ブレイクするための条件は何なのか。
全7回にわたって、本人が自ら語る「ひろゆき徹底解剖」をお送りする。第1回目は、現在の「YouTubeでダラダラと話すスタイル」に行き着いたワケを聞いた。(構成:種岡 健)
単純に「やって見せただけ」です
――ひろゆきさんのブームは「テレビのコメンテーター」「SNSでの発信」「書籍の出版」など、さまざまな要因があると思うのですが、一番は何といっても「YouTubeの切り抜き動画」だと思います。これの元々の狙いはどうでしたか?
ひろゆき氏:Googleが「Content ID」という仕組みを開発したのを知って、それでやってみようと思ったんですよね。その仕組みによって、違法アップロードによる著作権が守られて、勝手に編集された動画でも僕の元にお金が入るようになりました。
さらに元をたどると、YouTubeは個人的にはじめていました。「ベーシックインカムを実現しよう会議」とかのテーマでダラダラと長時間話していたんです。
それをやってみてわかったのは、「長時間のライブ配信で話し続けたほうがうまくいく」ということでした。
動画1本あたりの単価がめちゃくちゃ高くなったんです。普通のYouTuberは、動画の長さは10~20分くらいですよね。それだと、広告が1本しか入りません。僕の場合は、2時間も話すので、広告が5~6本も入ったんです。
そうすると、1回の再生あたりの広告収入がすごく増えます。それを身を以て試してみたんですよ。
――「やってみたかった」というよりは「やって見せた」という感じですか?
ひろゆき氏:そうです。ガジェット通信の会社でYouTuber事務所のようなことを始めようと思って、「長時間ライブで話したほうがいいよ!」って力説したんですが、誰も耳を貸さなかったんですね。
だから、「じゃあ、僕がやってみせよう」と思って。そうやって長時間の動画が溜まっていきました。
すると今度は、違法で勝手に「動画のいいところ」を編集して投稿する人が現れはじめました。ほとんどは削除依頼を出して対応してもらうのですが、AIによって権利者を特定して広告費を渡す仕組みができたんですね。それが先ほどの「Content ID」です。
「暇つぶし」にこそ可能性がある
ひろゆき氏:そもそも、動画は「編集したほうがいいな」と思っていたんですが、自分ではやりたくない。じゃあ、「編集スタッフを雇おう」と思うのが旧メディアの人たちなんですが……。
――第三者にやってもらうほうが早いと(笑)。
ひろゆき氏:そうです。一般のクリエイターはコンテンツの質を求めるのですが、動画なんて「暇つぶし」ですからね。その感覚は僕もわかっていました。
ひろゆき氏:そもそも、まともな質のいいコンテンツを見ようと思ったら、何億円もの予算をかけた「映画」とか「ネットフリックスのオリジナル動画」を見ますよ。
でも、そういうコンテンツは、見るための腰が重たいんです。ヘビーですから、家でじっくり見ますよね。
そうではなく、空き時間の30秒とか1分とかにサクッと暇つぶしに見る動画のほうが、じつはすごい可能性を秘めています。何の気兼ねもなく見れますから。それは、ニコニコ動画のときの経験が生かされていますね。
――「TikTok」より全然前ですね。
ひろゆき氏:はい。クオリティとかじゃないんですよね。ファンは長時間のダラダラ話すものを見るし、ファン以外は1分の短い動画を見る。その2つの行動パターンです。
たまたま、僕ができるスタイルが、「お酒を飲みながらコメントを拾う」という方法でした。これが、「切り抜きやすい」んですよね。Q&A形式ですから。そこで切るだけでも十分、短いコンテンツになります。
――これに狙いはなかったんですか?
ひろゆき氏:そうですよ。僕、1人語りができないですから。対談相手が質問をするか、誰かからコメントがくるか。それに答える方法でしか話せないんです。
それがたまたま「切り抜き」と相性がよかったんですよね。
単純に僕の「できないこと」を排除した結果が、あのスタイルです。
Vチューバーの人たちも、このスタイルですよね。だから、極めてネット的なスタイルなのかもしれないですね。他のメディアと違って、反応するだけという(笑)。
――ひろゆきさんのスタイルが成功して、「やって見せる」のはうまくいきましたよね。その後はどうしたんですか?