初期対応ができていない人は、
クレーマーにつけこまれやすい

 その証拠のようなエピソードもあります。

 以前、自らを「理論派のクレーマー」と称する男性と話したことがあります。この男性がはっきり言っていたのは「つけ込みやすいのは初期対応ができていない、ダメな人」ということでした。

「クレームをつけたとき、相手の最初の対応が良ければいい(そこで諦める)が、中途半端な説明で逃げようとしたら、怒りのスイッチが入ります。そうなったら、自分たちの立場を押し付けるような“上から目線の態度”で、ガンガンいくしかない」

「逆に、クレームをエスカレートさせにくいのは、自分の言い分をしっかり聞こうとする姿勢や、できることとできないことの基準が明確な姿勢の相手。こういう人には、むやみなことは言えないと思う。『できないことはできない』ときっぱり言われれば、『しっかりしているな』と一目置きます」

 あり得ない要求を突きつけるモンスターだとしても、相手は人間。こちらは明確な基準をもって対応するのが一番です。納得しない人が増える中で、多少担当者によって対応に差が出たとしても、基本は「公平・公正」、はっきりした基準を決めておくことが重要になります。

 今回の事件では、この男性のホテル代に多額の税金が使われたことも気になりますが、この対応の最大の誤りは、うるさいハードクレーマーを特別扱いした結果、他の困っている人や声すら出せない真の弱者を放置してしまっている点です。

 企業でも、行政機関や医療機関でも、何事も「できることとできないこと」ははっきりとあるはずです。

 次回は、困ったクレーマーへの具体的な言い回しや具体的な対応について解説します。