そうしたなか、2016年にオランダ・ハーグの仲裁裁判所が重要な判決を下した。仲裁裁判所は、1994年に発効した「国連海洋法条約」に基づき、中国の南シナ海における主権主張を退ける判断を示したのである。
ところが中国は、仲裁裁判所の判決に従おうとしない。それどころか、判決を“紙くず”呼ばわりして無視したうえ、岩礁を埋め立ててつくった人工島に滑走路やレーダーなどを建設しはじめたのである。
これは明らかに軍事施設で、中国の海洋進出を警戒するアメリカを刺激することになった。
アメリカの牽制にも臆さず
中国の挑発行為はエスカレート
しかし、中国はアメリカに睨まれても姿勢を変えることはなく、対立国への示威行動を続けた。2020年には中国の巡視船がベトナムの漁船に体当たりして沈没させたり、マレーシアの国営石油会社が資源開発する海域に自国の調査船を派遣するなど、挑発的な動きがますます目立つようになった。
そうしたなか、中国の動きを危険視するアメリカが、中国を牽制するために南シナ海で軍事演習を実施したところ、中国も同じ海域で実弾演習を行ったのである。
2021年になってからも、中国の挑発行為は止まらない。フィリピンが南沙諸島で実効支配する島の軍事拠点化計画を進めていると、3月に200隻以上の中国船団が出現し、長期停泊を続けた。その船団のなかには中国海軍の軍艦も含まれていたという。
南シナ海の領有権争いは、どんどんエスカレートしていっている。