選挙の争点は「消費税」と「コロナ給付金」
与党は具体策にブレーキか

 今回の総選挙は、直前の菅前政権が支持率を大きく下げてきた経緯から、自民党が大きく議席数を減らすのは確実だとみられています。メディアが報じる勝ち負けのラインとして、現有議席284と総議席の6割強を占めてきた自民党が、今回の選挙で232議席以下、つまり単独過半数を割れば与党の敗北。逆に233議席以上で踏みとどまれば野党の敗北だと言われています。

 選挙の争点として国民が注視しているのがこの「分配」に関係する各党の政策で、具体的には2年前の19年10月に10%に増税されて以来、庶民の負担となっている消費税と、コロナで苦しくなった懐に対する給付金の二つの政策が注目されています。

 共闘する野党の公約は、消費税については各党でばらつきはあるものの、おおむね「5%に戻す」が基本線で、下げないといっている党はありません。一方でこれは与党なので仕方ないとは思いますが、岸田首相の主張は「消費税率は変えない」です。

 給付金については、野党は「低所得者に10万~20万円」ないしは「一律10万円以上」という主張が目立ちます。これに対し与党の公明党は、年齢で区切って、「高校生以下の若い世代に一律10万円」と主張しています。そして岸田政権は「現金給付の方向で検討する」というだけで、具体的な金額や分配ルールについては一切述べていません。もっとも公明党の案に対して「反対しない」と述べていらっしゃるので、政府としては公明党案に収束していくのかもしれません。

 つまり、興味深いことに野党の方が弱者に対する分配を重視している一方で、岸田首相は分配と成長につながる具体的な政策についてはおおむねブレーキを踏んでいるわけです。

 蛇足ながら解説すれば、5%の消費減税は実質的に物価が5%下がることになるため、経済成長につながります。そしてコロナ禍で所得が減少した層に対しては、消費減税分が分配に相当します。たとえば年収200万円程度で生活している人が、10%の消費税を年間約20万円払っている場合、消費税が半分の5%に減れば、手元に10万円残ります。これは、10万円が現金で国から分配されるのと一緒だからです。

 そこに、野党案ならさらに10万円の給付金が加算されます。一方で与党案だと、たとえコロナ禍で収入が減った人でも、20代で独身ならば基本的に手が差し伸べられないわけです。