クレーマーと対峙するとき、初期対応の心構え

 まず最初に確認しておきたいのは、「100%の顧客が満足するサービスはありえない」ということです。「顧客満足ナンバーワン」をアピールするどのTVコマーシャルでも、100%とうたっているものはなく、95~98%くらいまでのはずです。行政機関とて同じこと。どんなに頑張っても、市民に100%満足してもらうことは不可能です。

 それなのに、すべての市民の言い分を聞き「100%納得してもらう対応」を取ろうとしてしまうと、相手の言いなりになるしか方法はありません。同時に、納得しない人を「100%納得させる方法」もないのですから納得も説得も諦める場合があってもいいのです。

 総じて、公務員や医療機関で働く方は真面目で一生懸命なタイプがほとんどで、「断れない」「断ってはいけない」と強く思っている人は案外多いのです。しかし、真面目で一生懸命な対応だけでは乗り越えられないケースもあるのです。

 今回の事件の最大のポイントは、相手が社会的な弱者(高齢者・生活保護世帯)であることです。「(権力を持つ)行政機関や企業vs社会的弱者」という図式は、マスコミやネットを騒がせる格好の材料になりがちです。市役所側としては「格差社会の典型的な対立構造の事例としてバッシングを受けかねない」とナーバスにもなるでしょう。要するに、今回の対象は通常の市民対応よりもさらに丁寧な対応を心がけなければならないということ。相手との接し方に注意・配慮し、段階(ステップ)を踏んで対応しなければなりません。