全員が同時に感染したとはいえ、具合が悪くなるタイミングや症状の程度はそれぞれ違っており、住人のなかには中等症レベルにまで体調が悪化した女性もいれば、軽症者もいたそうだ。

 このシェアハウスの入居者はジョージさん除いて4人。住人それぞれに個室がある物件だったが、まともに声も出せない彼女はリビングに寝かせ、症状が落ち着いている人が交代で看病する態勢をとり、なんとか闘病生活を乗り切ったという。「誰かがつらいときに、動ける人が気遣ってあげられる環境は心強かったですね」とジョージさんは当時を振り返る。

 また、療養中に「シェアハウスだから」といって困ったことはなく、むしろ感染前よりも仲間との絆が深まった感覚があるそうだ。

「全員の嗅覚がなくなっていたので、平常時にはニオイが強くてなかなか手が出ないドリアンやくさやを取り寄せて食べてみたりしました。症状がつらいなかでも前向きに過ごせて、皆で病気と闘っている感覚があったのが、このシェアハウスにいてよかったと思える点ですね。もし一人暮らしで感染していたらどれだけ心細い思いをしていたか、想像するだけで恐ろしいです」

 その後、無事回復したジョージさんは、闘病前まで住んでいたシェアハウスを引き払い、闘病生活を共にした住人たちの暮らすシェアハウスに引っ越している。

 ところで、シェアハウスにおけるクラスターのニュースが報道されるなか、ジョージさんは他人と暮らすことへのリスクは感じていたのだろうか。

「入居者はそれぞれ消毒液を買い込んだり、手洗いを徹底したりしていたので、そこまでリスクとは捉えていませんでした。シェアハウスに住むのは、普通に家族と住んでいる感覚と変わりません。家庭内感染と同じなので、他人同士で住んでいるからといって、そこまで危険視する必要はないと思います」