勤務時間外に
死亡するよう計画

 検察側冒頭陳述によると、久保木被告は08年に別の病院に就職した後、15年に大口病院へ転職。16年3月に患者が死亡した際、遺族から「この看護師が殺した」と罵倒される出来事があった。

 同4月には、別の患者の遺族が医師と看護師を責めているところを目撃。そういったことが相次いだため、担当する患者が自分の勤務時間に死亡した場合、同じように非難されるのではないかと不安を募らせるようになった。これがきっかけで7月ごろから自分の勤務時間外に患者が死亡するよう、投与予定の点滴バッグに消毒液の注入を繰り返したという。

 9月15日早朝、久保木被告は日勤で出勤し、興津さんの担当になった。そして同日夜~16日に投与される予定だった点滴バッグに注射器で消毒液を注入し、興津さんは久保木被告が勤務から外れた16日午前、容体が急変し死亡した。

 18日は夜勤で午後3時ごろ出勤し、西川さんの担当になった。容体が悪かったことから日勤の看護師がいるうちに死亡させれば家族への説明が避けられると考え、投与中の点滴バッグに直接注射器で注入し、夕方に死亡させた。

 同日は八巻さんら5人に投与される予定だった点滴バッグに消毒液を注入し、八巻さんは久保木被告が勤務終了後の20日午前、容体が急変し死亡した。検察側は、久保木被告はいずれも勤務を外れる時間帯に死亡するように計画したと主張。「自分が担当の時に患者が死亡して遺族に説明するのが嫌だった」という供述を引用し、これが動機と指摘した。

 一方、弁護側によると、久保木被告は遺族から罵倒された出来事の後、ショックのため過食や不眠に悩まされたと強調。3件の事件発覚後は、心的外傷後ストレス障害(PTSD)と診断されたという。