量刑を決める判断材料で
久保木被告はどう認定されるか

「勤務態度はまじめで遅刻や無断欠勤はなかった」(元同僚看護師の証言)という久保木被告。被告人質問で弁護側から後悔や自責の念はなかったか問われ「申し訳ないが、当時はなかった」と述べた。

 殺害方法については、看護師が謝って消毒液を点滴バッグに混入したというニュースを見て思い付いたと説明。病院には消毒液が3種類あったが、ヂアミトールを選んだ理由を「透明で無臭だから」と話した。

 遺族に対しては「かけがえのない家族を奪った罪の重さを痛感した」「申し訳ないことをしたと思うが、言葉でどう表せばいいのか分からない」と反省の意を示すとともに、謝罪の言葉を口にしていた。

 検察側は論告で、久保木被告に自閉スペクトラム症の特性はあるが、事件への意思決定や実行に影響はなく「自己の都合のみを考えており身勝手」と指摘し、死刑を求刑。弁護側は「統合失調症の影響で善悪を判断する能力が著しく阻害されていた」と主張し、無期懲役が相当と訴えた。

 それでは、判決の行方はどうなるのだろうか。

 量刑を決める判断材料としては一般的に(1)犯行の手口や態様、(2)動機、(3)計画性、(4)結果の重大性、(5)被害弁償の有無、(6)被害者や遺族の処罰感情、(7)被告人の性格、(8)被告人の態度や姿勢、(9)被告人の年齢や環境、(10)前科前歴の有無、(11)社会の処罰感情――などが挙げられる。

 では、久保木被告の場合はどうか。

(1)興津さんの想像を絶する痛みや苦しみなどを考慮すると極めて残忍、(2)身勝手で自己中心的、(3)自身の医療知識を駆使し計画性は高い、(4)3人の命を奪っており極めて重大、(5)公判で金銭的賠償を行ったという事実は語られていない。

(6)極めて峻(しゅん)烈、(7)「まじめ」との証言、(8)遺族への謝罪の言葉を口にし「死んで償いたい」と反省、(9)弁護側は「夜勤が多くストレスで抑うつ状態」と主張、(10)前科前歴はない、(11)社会を震撼(かん)させ与えた影響も多大――と認定されるだろう。