建設費は約3300億円で、660億円を地方自治体(大阪府・大阪市)とJR西日本、南海電鉄が出資。国が770億、地方が850億円を補助金として支出し、残る1020億円を関西高速鉄道が借り入れ、線路使用料収入で償還する仕組みだ。

 工事はまず、中之島駅が設けられる玉江橋南詰~常安橋北詰間の中央分離帯で試掘調査を行い、続いて西本町駅が設けられる靱本町一丁目~西大橋間でも着手する予定だ。

うめきた新駅の工事現場(筆者撮影)うめきた新駅の工事現場(筆者撮影)

 とはいえ、本格的な着工はしばらく先の話。一般的に地下鉄工事は、駅部を地上から掘り下げる開削工法、駅間のトンネル部を横からくり抜くシールド工法で行われるが、駅部を掘削するためには、中央分離帯の撤去やガス管、通信ケーブルなど埋設物の移設を含む準備工事が必要になる。続いて路面を掘り下げても土が崩れてこないように地中にくいを打ち込んで壁を作り、道路上に蓋をする。

 ここまで2~3年が必要で、それからようやく掘削を開始することができる。掘削と駅の躯体構築に3年程度かかり、同時に駅からシールドマシンを発進させてトンネルを掘削する。駅の躯体が完成し、全てのトンネルが貫通するのは開業の3年ほど前。そこから駅の建築工事やトンネルの軌道、電気設備などの工事が行われ、開業半年ほど前から試運転が始まる。まだまだ先は長いのだ。

国鉄時代から始まった構想が
具体化した二つの背景

 そもそも、なにわ筋線の構想は国鉄時代からあったそうだ。1989年の運輸政策審議会答申第10号で「2005年までに整備することが適当な路線」と位置付けられたことで正式に検討が始まり、1999年から2000年にかけて国土交通省が整備効果を測るための調査を実施しているが、計画が具体化したのは2010年代に入ってからのことだ。

 この背景には訪日外国人観光客の増加と、アジア主要都市とのグローバル競争の激化があった。関西空港は空港別入出国者数で成田空港に次ぐ2位の位置づけだが、2009年から2019年にかけて成田空港の入国者が2.4倍に増えたのに対し、関西空港は6.2倍と大きく増加しており、交通アクセスの改善は急務であった。