大阪~関西空港間は
15分の時間短縮

 話を戻そう。なにわ筋線がうめきた新駅を経由して新大阪と接続されることで、JR西日本だけでなく南海の列車も新大阪まで乗り入れることになる。鉄道事業許可申請時の事業基本計画によれば、JR西日本・南海とも1時間当たり4本の空港直通列車を運行し、これとは別にそれぞれ特急列車を走らせる計画だ。

 この区間には既に特急「はるか」が運行されているが、新大阪から梅田貨物線・大阪環状線を経由するため大阪駅には停車しない。そのため大阪駅から関西国際空港に向かうためには、地下鉄で天王寺に出て「はるか」に乗るか、難波に出て「ラピート」に乗る必要があり、1時間前後を要する。

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 それが、なにわ筋線が開通すると大阪~関西空港間が約45分で結ばれ、15分の時間短縮となる。国土交通省が2009年から2010年にかけて行った「関西圏における高速交通ネットワークへの鉄道アクセス改善方策に関する調査」は、「はるか」がJR難波駅に停車せず、「ラピート」が南海難波駅以南を実績最短時間(29分)と同程度で走行した場合、30分台後半まで短縮の可能性があると報告しており、更なる時間短縮も期待できそうだ。

 そのほか、速達性向上へのこだわりが見られるのが線路の規格である。一般的な地下鉄の最高速度は時速80キロだが、なにわ筋線は異例ともいえる設計最高速度時速110キロで設計されている。JR西日本はあくまでも規格上の数値で、高速化に対応した架線の開発など技術的な課題もあるため、実際の運転速度は未定としているが、高速走行を強く意識した路線であることは間違いない。

 コロナ禍で航空需要が激減し、「はるか」と「ラピート」が大減便される中、動き出したなにわ筋線。10年後の世界がどうなっているかは誰にも分からないが、なにわ筋線が必要とされる世の中に戻っていることを願いたい。

【訂正】記事初出時より以下のように訂正します。
4段落目:JR西日本と南海が第三種鉄道事業者→JR西日本と南海が第二種鉄道事業者
(2021年11月1日14:51  ダイヤモンド編集部)