トヨタPhoto:123RF

トランプ関税への対応に政財界が追われている。石破茂首相はトヨタ自動車の豊田章男会長と急きょ面会し、自動車産業への影響を意見交換した。中国勢の台頭も目覚ましい中、生き残れる自動車メーカーの条件とは?危機感が、トヨタと独ダイムラーの合従連衡および世界最大級のトラック連合の誕生へつながり、自動車再編が他業界でのリストラや再編の呼び水となるはずだ。(多摩大学特別招聘教授 真壁昭夫)

世界最大級の中・大型トラック連合が誕生へ

 世界の自動車産業の構図に大きな変化が起きている。象徴する一例が、トヨタ自動車と独ダイムラートラックによる持ち株会社の設立だ。この提携が実現すれば、日独の有力企業による世界最大級の中・大型トラック連合が誕生することになる。

 この合従連衡の背景には、まず、世界シェアを急拡大している中国トラックメーカーへの対抗がある。また、トヨタは乗用車と商用車の両分野で、時間とコストがかかる電動化やSDV(ソフトウェア・ディファインド・ビークル)の開発をする必要にも迫られている。さらに、トランプ関税リスクへの対応も、日独企業の連携加速に影響を及ぼしたはずだ。

 今後、自動車業界では商用車と乗用車の事業を分けて、それぞれの電動化や車載用のAI(人工知能)、オペレーティング・システムの開発を進めるスタイルが増えるとみられる。主要国にとって自動車産業は経済の重要な柱だ。自動車分野で世界的な再編が加速すると、他の分野にも波及するだろう。

 わが国にとって自動車産業は経済の最も重要な分野である。国際的な業界再編には、十分な注意が必要だ。決して、その動きに乗り遅れることがあってはならない。