税務調査では「うそをつかない」ことが
一番「得」である

 また、前述の通り、税務署は過去の銀行口座の入出金記録を確認することができる。

 そのため、多額の現金を引き出したはずなのに、その行き先がはっきりしなければ「どこに移したのか?」と疑問を持つ。「タンス預金」という言葉があるように、現金を家の中のどこかにしまってあるのではないかと疑われ、自宅の全ての部屋を見せることになる。

 税務調査官はその道のプロである。素人である相続人が生半可な知恵でお金を隠そうとしても、ほとんどの場合はバレてしまうということを覚悟しておくべきだ。

 税務調査での質問では、被相続人や相続人自身の財産がどうやってつくられたのかを根掘り葉掘り聞かれることになる。

 亡くなった人の財産については、知っていることは事実をありのままに、そして知らないことは「知らない」と伝えればよい。

 大事なのは、自分自身の財産について、あるいは自分がやった行為については、絶対にうそをついてはいけないということだ。

 事実と違うことを話すと、後で必ずつじつまが合わなくなってくる。適当な言い逃れをしようとしても、「前に聞いたときは、お金をもらってないと言っていましたよね?」などと後から突っ込まれてしまい、全てバレてしまうのが常なのだ。

 下手にうそをついてしまうと、故意の隠蔽(いんぺい)と判断されて重加算税が課せられてしまう。税務調査といっても、うそをつかず正直に応じるのが金銭的にも時間的にも結果的に一番「得」なのである。