「ぼくの目標は、クリエイターとして一人前になることでした。一方で当時、中学生でそのポジションを確立できている人がいなかったんですよ。それで、自分のレベルを強制的に一人前にするために、『中学生クリエイター』と名乗り始めました。今は高校生になり、依頼も格段に増えました」

親の「将来何になりたい?」という質問が、子どもの可能性を狭めるワケ通信制高校のN高等学校に通う、コンドウハルキくん

 ハルキくんの原点は、中2の時に出合った、あるYouTube動画だという。Adobe Illustratorというデザインツールで1枚のイラストをつくるまでの過程に魅せられ、夢中になってまねた経験が、今につながっている。

子どもの可能性を広げる親が
大切にしている視点とは?

 このように、学業との両立ながらも、ひとりのビジネスパーソンとして活躍するハルキくん。家庭では彼の挑戦を、どうアシストしてきたのだろうか?

 ハルキくんの母・近藤英恵(こんどう・はなえ)さんは、こう話してくれた。

「以前から、『将来何になりたい?』という言葉には疑問を抱いています。たとえば大人が『大きくなったら何になりたい?』と聞いたとして、子どもが『それって今やっちゃいけないの?』と聞いてきたとしたら、明確に答えられる大人って少ないと思うんです」

 30年前、子どもの憧れの職業といえば、パイロットや教師、幼稚園の先生が上位だった。これらは資格が必要で、年齢の制約もある。大人にならないと当然、かなえられない。

 一方で今は、イラストレーターやゲームクリエイター、そしてYouTuberのようなデジタル系の職種の人気がダントツだ。30年前と明確に違うのは、年齢の制約がほとんどないことだ。

「ハルキも小学生の時、『YouTuberの“はじめしゃちょー”みたいになりたい』と言ったことがあります。そのときに私が、『じゃあ、動画をアップしてみたら?』と声をかけたんです。実際にハルキは、動画編集からYouTube動画のアップまで挑戦しました。そのときの経験が、今のビジネスで生きているんですよね」

親の「将来何になりたい?」という質問が、子どもの可能性を狭めるワケ写真提供:コンドウハルキ

 実際、子ども向けのデジタルツールは続々と登場している。Nintendo Switchのゲーム開発ソフト『ナビつき!つくってわかるはじめてゲームプログラミング』や、iPadのデザインツール『Adobe Illustrator Draw』(現在はダウンロード不可)がその代表例である。作品を売ることができるプラットフォーム『ココナラ』は、保護者の同意があれば、子どもでも利用できる。

 そう。今は、パソコン1台でスキルを磨き、それを売買することに、何歳からでも挑戦できる時代なのだ。