即戦力の採用とか能力主義人事とかスペシャリストの育成とか、そういうことがいわれて久しい。先日とある人事部長氏に会食の席で率直な話を聞いてみた。
――― やっぱりこれからは能力主義とかスペシャリスト重視という方向に日本企業も変わっていくべきだというご意見ですね?採用にしても、新卒の定期採用にこだわらず、即戦力となるようなスキルのある人材を通年でどんどん採っていくという方針だそうですが。
「議論の余地ないね。終身雇用と年功序列は完全に終わった。もはやグローバルでフラットな世の中だよ。いままでのぬるま湯人事とは決別だ。わが社も今年から採用や評価のシステムを抜本的に改革したよ」
――― なるほど。でも、能力主義といっても実際はなかなか難しいですね。具体的にはどういうスキルなり能力が求められますか。たとえば英語力とか?おっしゃるようにグローバル化の時代ですし。
「馬鹿いっちゃ困る。英語ができるぐらいでグローバル化ができれば世話ないよ。下手に語学力重視とかいうと、そればっかりの英語屋が集まるのが関の山だ」
――― じゃあ、ITは?クラウドやビッグデータの活用が経営の課題になっています。オープン・イノベーションとの絡みでも、ITのスペシャリストは重要になりますね。
「実際のところ、ITとかクラウドとかビッグデータとかソーシャルとか、そっちの方面で入ってくる連中はろくでもないね。奴らときたらコンピュータの前に座っているとき以外は子供同然だよ。リアルな世界での交渉力ゼロ、対人関係能力ゼロだろ。横に座ってるくせに、用件はメールでお願いします、とくるからな。ずいぶん採用したけど、もう懲りたよ。」
――― ソーシャル・ネットワークの活用もこれからの経営戦略にとって不可欠だと御社は強調していますが。
「ま、表向きはそうだけどね。連中ときたらますます手に負えないよ。朝から晩までスマホをチクチクやって、フェイスブックばっかり見ている。ソーシャルか何だか知らないけど、『今日のランチはカルボナーラ』って無意味な写真を載せて、『イイね』ってバカじゃないのか。『集合知』が聞いてあきれるよ」