日本生命で三度発覚した「退職金共済」不正契約の特殊な中身

日本生命の営業部長による
退職金共済の不正契約がまた発覚

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Q 日本生命保険の営業部長による、国の中小企業向け退職金共済制度を悪用した不正契約がまた話題になっていますね。

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A 話題になったのは、今回で3回目ですね。最初に発覚したのは2014年12月のことで、2回目が20年7月、そして今年11月に3回目の不正が明らかになりました。

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Q 各紙報道では「退職金共済で不正」「不正受給を指南」「852人分不正契約」「中小退職金制度でまた不正、新たに6550万円」などと書かれていますが、これはどういった制度なのですか。

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A 不正契約に利用されたのは、独立行政法人である勤労者退職金共済機構(以下、機構)が運営する中小企業退職金共済制度です。略して「中退共」と呼ばれています。

 自前で退職金制度を持てない中小・零細企業のための制度で、従業員1人当たり月額5000〜3万円の掛け金を機構に支払うと、従業員が退職する際に、機構が掛け金や契約期間に応じて退職金を従業員に支払うという仕組みです。

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Q 税制メリットがあるのですよね。

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A はい。掛け金は全額非課税となります。加えて、初めて中退共制度に加入する事業主には、月額の掛金の2分の1(従業員ごとの上限は5000円)を国が助成します。この助成は、加入後4カ月目から1年間となっています。

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Q なるほど。国の助成金が出る退職金制度を悪用したというわけですね。では、日本生命の社員はどういった不正を行ったのでしょうか。

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A 14年当時、50歳代だった営業拠点の営業部長が傘下の営業職員に対し、営業成績を上げるために中退共への勧誘を強く指示しました。その際に、「実態がない事業者でも契約できる」「絶対に損はさせない」などと言って加入を促進させたのです。

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Q 事業や雇用の実態がない事業者にも中退共に加入させたのですか。

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A そういうことです。中には、従業員が退職していないにもかかわらず、退職したと装って退職金を不正に請求したケースもあります。また、営業職員の中には、自ら架空の従業員になりすました事例も発覚しています。

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Q それは悪質ですね。そこまでするということは、営業部長や営業職員の成績に大きく貢献するからでしょうか。