いずれもいわゆるアクティビスト(物言う株主)やファンド株主の好みそうな内容である。率直に言って、コングロマリットディスカウントの解消よりも、自社株買いに、借入金比率の向上によるレバレッジの引き上げ、さらにコスト削減、株主寄りの経営の強化、といったことの効果が大きそうに見える。

「コングロマリットディスカウントの解消」はむしろ単なるお題目で、事業分割を通じた株主利益追求のための財務政策の実施が株主の望みであり、それに東芝の経営陣が呼応せざるを得ない状況なのではないか。

 では、わが国で、こうした東芝的な事業分割は今後も登場するのだろうか。分割できる複数の事業分野を持つ会社は多い。

会社分割が案外はやるのではないか
そう考える理由

 筆者は、案外はやる可能性があるのではないかと思う。

 今回東芝は、アクティビスト的なファンド株主に追い込まれて、このような事態を迎えているように見えるが、同社の場合は株主の構成上、時間が早く進んでしまった。しかし、アクティビストが追い込まなくても、株主の経済的な利益の方向性は一緒だ。経営者のインセンティブ構造を変化させると、事業分割は他の会社でも行われる可能性がある。

 端的に言って、事業分割は、経営者に経済的メリットを与える「きっかけ」として利用できる。

 例えば、A社、B社、C社に事業を分割してこれを上場させるとしよう。そのとき経営者に自社株を付与したり、ストックオプションを与えたりして、彼らが個人的にもうけられる機会を作ると、彼らが事業の分割に協力してくれる可能性は大いにあるのではないか。

 現在でも多くの会社が、社外取締役の起用で体裁を整えつつ、横並び的に他社を見ながら経営幹部の報酬をじわじわと上げ続けている。しかし、経営者たちは(特にサラリーマン経営者は)もっと手っ取り早くもうけたいだろう。

 事業分割は、ストックオプションなどの制度を変えたり、事業を売却してキャッシュを作ったり、株式の上場を通じる収益機会を作ったりするのに好都合なイベントとすることができる。