なぜ岸田政権は中小企業に甘いのか

 ただ、岸田政権では今のところそういう話にはなっていない。

 看護師は介護・保育の職員に比べて収入も高いので、4000円程度の賃上げでいいだろ、と「個人へのバラマキ」にはかなりケチケチしている割には、中小企業という「法人」に対しては、「大盤振る舞い」を続ける見込みだ。

 では、なぜ岸田政権はこんなにも中小企業に甘いのか。

 まず大きいのは、衆院選の「論功行賞」ということがある。本連載で繰り返し述べているが、中小企業の業界団体である日本商工会議所は自民党の有力な支持団体。同じく自民の選挙を長く支えた日本医師会が、民主党政権時に裏切ったのに対して、日本商工会議所などは「自民一筋」を貫いた、蜜月の関係である。今回の選挙でもしっかりと支えてくれた業界に対して、それなりのバラマキで報いるのは当然だ。

 ただ、本質的なところで言えば、国会議員と、中小企業経営者の「国からの補助金」というものに対する考え方が近いということも無関係ではない、と思っている。

 例えば、国会議員が毎月100万円支給されるという「文書通信交通滞在費」がわかりやすい。

 初当選の国会議員がわずか1日しか在職していないのに満額支給されたと問題になっているが、本当の問題はそんなことではない。

 中小企業への補助金と同様に、「金をもらったらもらいっぱなしで、それをどのように使ったかチェックされない」という“バラマキ型補助金”ということだ。