「朝課外が始まったのは、学校が進学塾の役割を肩代わりする必要があったからです。昔は、東京や大阪などの都市部の学生は、放課後に進学塾に行くのが当たり前だった一方で、地方には塾が少なかった。塾がない田舎の生徒を都市部の学力レベルに追いつかせるためのものだったんです」(内田氏、以下同)

 その後、朝課外は地方の学校を中心に根づき、今なお続く“伝統”となっている。ただ、朝課外は生徒の学習時間を増やす一方で、教師や生徒にとって負担となる側面を持ち合わせる。

 教員にとっては、通常授業の準備や生徒の指導といった激務の上に、朝課外の準備の手間が加わり、明らかに負荷が大きくなる。また、生徒にしても、朝課外のために睡眠時間を削って早起きする必要がある。部活動に入っている場合、朝課外の前に朝練を行うパターンもあるようだ。

 ネット上には、「通学に1時間以上かかるため、朝課外のために6時前には家を出ていた」「朝早く起きた分、昼間の授業が眠くて仕方なかった」といった朝課外を体験した人の声も見られた。

「現在も朝課外を強制化する学校は多いですが、本来であればやってもやらなくてもいい。ざっくり言うと“趣味”のような慣習です。通常授業のことを『正課』と呼びますが、朝課外はその正課の“外”に当たる時間なので、実施や出席の義務はありません」

 義務ではないにもかかわらず、さも当たり前のように朝課外を実施する学校は多い。朝課外に遅れるとクラスメートから白い目で見られたり、なかには、朝課外の出席状況を進学や就職の際の校内推薦の選考基準とする例もあるそうだ。

「正式に制度に組み込まれていない慣習によって、教師や生徒の負担が増えている現状は明らかにおかしいです」

議論から漏れ落ちる
朝課外の“闇”

 教師や生徒の負担となる朝課外だが、実は、これまで研究や議論の場にはほとんど上がってこなかったという。内田氏は「国や教育委員会が指針を出すべき」と述べるが、それができない根本的な理由もあるそうだ。

「朝課外はそもそも制度化された学校活動ではないため、国や教育委員会がわざわざ議論の対象に上げる必要がないんです。正規の授業ではない朝課外に対して、行政が実態調査やガイドライン作成に動くわけもなく、議論の対象から完全に漏れ落ちて学校の“闇”となっているのです」

 地方の教師と保護者の思いから始まった朝課外は、行政が明確な指針を出さない問題であるがゆえに、現場の声が放置され続けてきたのだ。

 ただ、近年になって、事実上必修化されてきた朝課外を見直す動きも生まれている。