部活動の問題点をさまざまなデータで示した『部活動の社会学』(岩波書店)が注目を集めている。同書を編集した、教育社会学者で名古屋大学准教授の内田良氏に、現代の部活の実態とあるべき姿を聞いた。(清談社 沼澤典史)
タダで指導の学校と教員に
依存する保護者
コロナ禍で開催された五輪や甲子園はさまざまな波紋を呼び、感染対策の観点から学校の部活動の可否も議論されている。
本書は2017年に行った全国約4000人の中学校教員へのアンケートなどを元に、部活が過熱していくメカニズムを記している。『ブラック部活動』(東洋館出版社)などで部活動への提言を行ってきた内田氏の集大成とも言えるものだ。
例えば男女差や世代・家族構成による差が部活顧問の負担に与える影響や親の学歴、職業、世帯年収など示すSES(Social-Economic Status:社会経済的背景)を用いて地域の部活の熱中度合いの違いを論じている。
「部活動は学校生活や我々の社会にとても根付いているにもかかわらず、学術的な議論や調査がほとんどされませんでした。学習指導要領で部活は『自主的・自発的な活動』と書かれているだけで、趣味にすぎないため、学術上の位置付けが低かったのです。本書ではさまざまなデータに基づき、部活動の議論を深める工夫をしました」