2017年9月には、福岡県議会にて初めて朝課外の問題が取り上げられた。その後、福岡県教育委員会は実態調査に乗り出し、2018年春の新学期からは朝課外への参加の意思を生徒に確認するという方針を各校に伝えたという。

 ただし、事態はそう簡単には変わらなかったようだ。2018年4月18日付の『西日本新聞』の報道によると、生徒に朝課外の参加を問う同意書を渡したものの、指導教員が一方的に「出席に同意するように」と指示したり、「不参加なら三者面談をする」と生徒を脅したり、なかには、同意書に「同意」の一択しかない学校もあったそうだ。

 内田氏は、なかなか朝課外の実態が変わらない要因として、保護者側から学校への依存があると指摘する。

「朝課外の実施に対する教員への手当ては、PTA会費に含めるなどして、保護者から徴収するケースが多いです。この額は、子どもを塾に通わせるよりも割安なので、『経済的負担を抑えて子どもの学力を伸ばしてほしい』と学校の指導に頼る保護者も多いです」

 教師の側も、簡単に「廃止」を訴えられない事情を抱えている。

「いざ朝課外を廃止すれば、生徒の成績が落ちることが懸念されます。教員側は負担を感じていても、進学実績を上げたいという学校の本音に従わざるをえず、また自分が受け持つ生徒が都市部の学生との競争に勝ってほしい、という思いやりの心もあるので、一概に反対の声を上げるのが難しい状況です」

慣習化する朝課外の
本来あるべき姿とは

 行政からの指針もなく、現場の負担だけが増え続ける朝課外に対し、どのような対策を取るべきなのか。内田氏は次のように語る。

「少なくとも生徒に対しては、“朝課外はあくまで選択制”であることを保証する必要があります。『教育サービスとして朝課外をやりますが、来るかどうかは自由です』と伝えることはすぐにできるはずです。教師の側も、朝課外は義務ではないという意識を改めて持つべきです」

 朝課外が始まった当時から時代は変わり、現在は塾の数が増え、地方でも都市と同じオンライン授業を受けることができる。生徒本人が、朝課外のほうが勉強しやすい、と思ったら出席するくらいの意識でいいのかもしれない。

 ただし、「おそらく自主参加を促しても、“皆が参加しているから”という同調圧力で、初めのうちは多くの生徒が参加してしまうだろう」とも内田氏はいう。朝課外の慣習を根底から変えるための方法はあるのだろうか。

「生徒が同調圧力で参加の意思を左右されないためには、朝課外を学校のシステムから完全に切り離す必要があります。たとえば、希望する生徒から指導料を集めて、地域の塾の先生に委託すれば、教師の負担も減り、塾側にとっても利益や自社の宣伝につながるはず。この方法には、教育委員会のサポートも不可欠です。最終的には『教えたい人が教える、受けたい人が受ける』という仕組みをつくることが理想的と考えます」

 長く慣習化してきた朝課外の現状が変わるには、時間がかかるだろう。ただ、教師や生徒の負担に見合うだけの学習効果は本当にあるのか、より良い方法はないかと、見直すべき時期にあることは確かだ。