群れから離れ、孤独の中で「個」を磨く

孤独に不慣れなのは、本人が弱いせいではありません。

多くの社会が長らく、「管理」を前提とした社会システムを敷いてきたからです。

土地と戸籍を管理して、場に人を縛り付け、個人の移動を制約した近代の政策は、それによって戦乱を鎮めてきましたが、「自分の意思を持つよりも、お上に管理されるほうが楽に生きられる」という「考えない個人」を増やしました。

飼い慣らされることに抵抗を感じなくなってしまったのです。

その感覚は、戦後の高度経済成長期に強烈な成功体験となった大量生産型の工業社会にも受け継がれ、現代人の価値観のベースになっていると思われます。

しかし、これからの世界は、まったく違う価値観へ塗り替えられようとしています。

国境や情報の境目はどんどんなくなり、「個」としての力を問われる時代にすでに突入しています。

今、自分が何を感じ、何をしたいと思うのか。

敏感に心の声を聞き、感性を発揮していく。

そんな生き方、働き方が、これからのスタンダードになるはずです。

自分自身の輪郭を明確に縁取るためには、群れから離れ、孤独の中で「個」を磨く時間がもっと必要なのだと、早く気づくべきです。

(本原稿は、中野善壽著 『孤独からはじめよう』から一部抜粋・改変したものです)