政府による未成年者のゲーム規制で人材不足の危機
実は中国の一部のLoLファンは心中穏やかではない。
「中国国内で次世代のプロゲーマーは育つのか」という疑問がささやかれているからだ。順調な成長が見込まれていた中国のeスポーツ産業だが、ここに来てシナリオに狂いが出てきたのである。
eスポーツといえば、今や中国のお家芸にも等しい。2008年に国家体育総局がこれを公式スポーツとして認めてからは、規模拡大の一途をたどってきた。
ビッグデータコンサルに強みを持つ中国の「艾媒諮詢」によれば、2018年の市場規模は835億元(約1.5兆円)であり、34年後の今年は、さらにその倍以上の1736億元(約3.2兆円)になると予測、2022年の中国のユーザー数については4億1800万人に達すると見込んでいる。
しかし中国政府は2021年8月、18歳未満の未成年者がオンラインゲーム中毒になるのを防ぐため、「新未成年者保護法」を公布し厳格な管理を打ち出した。すでに2019年の「未成年者保護法」の改正で時間制限と実名登録が設けられたが、「新未成年保護法」では未成年者のゲーム時間を「金・土・日・祝日のみの午後8時~午後9時までの1時間」と、さらに厳しく限定した。
プロゲーマーの養成において、黄金年齢といわれるのは10代中盤からの未成年期だが、「新未成年者保護法」の施行によって、中国でのプロゲーマー養成は、完全にその時期を外してしまうことになった。遼寧省出身でLoLの熱狂的なファンである劉思萌さん(仮名、25歳)は、こうコメントする。
「中国でのプロゲーマーの育成は14~15歳前後からといわれていて、そこから猛特訓が始まります。昼から深夜まで特訓し、また昼に起きて特訓といった過酷なトレーニングで、テクニックもさることながら、世界戦を視野に入れて時差に合わせるための調整も行います。けれども、中国では1日1時間の制限が外れる18歳になってようやくプロへの道が開かれるわけで、今のレベルのプロゲーマーを生み出すことは、今後かなり難しくなってくるかもしれません」