疑問や問題をみつける力
を養うことの大切さ

末永 興味や疑問をもつことが難しいのは、大人だけではありません。中学生でも「疑問が出てきません」「疑問とか、別にないです」と言います。その原因の1つは、学校教育でしょう。

 今の学校教育の原型は、明治時代につくられたものです。明治の時代は「殖産興業」「富国強兵」などに象徴されるように、産業に注力して海外と渡り合える強い国をつくっていくのが目標でした。

 そのため学校教育では、同じ正解にいち早くたどり着くことできる、ある意味で「同質的な人間」をたくさん生み出していく必要がありました。かなり変わってきたとはいえ、そうした考えは今の学校教育のベースにもあります。

 変化が大きくて先の見通しが立たない今の時代、教育の前提だった目的やゴールも変わってきています。そんな時代は、これまでどおりの1つの正解に早くたどり着く教育でなく、テストでは簡単に採点できないような力、これまで目を向けてこられなかった、疑問をもつ力や主観を信じる力、そこから自分の答えをつくっていく力を育む教育が必要になってくるでしょう。

 私たちが受けた教育では、それらは「非効率なもの」として排除されていましたから、「疑問がもてない」というのは、当たり前のことだといえます。そこは意識してトレーニングしていかないといけないでしょう。

小野 末永さんのアート思考に関するお話は、会社での業務にも通じるところがたくさんあります。私もぺんてるである程度働いて管理職になった頃から、部下たちには「つねに問題意識をもって業務にあたれ」とよく言っていました。

 会社にいると、日常の仕事でいっぱいいっぱいの社員も多く、自分から問題を探してそれを解決する、ということはなかなかできませんからね。

末永 学校でアート思考の授業をするときは、「自分の興味のタネ、自分の好きなことを見つける」だけではなく、「自分の疑問に目を向けてみる」「その前にある違和感に目を向けてみる」という授業も展開しています。その点はたしかに、働く大人にも通じると思いますね。