「“正解からはみだそう” “表現するよろこびをはぐくむ” ために。」というコーポレートメッセージを発信しているぺんてる株式会社社長の小野裕之さんと、ベストセラーになった『13歳からのアート思考』の著者であり、美術教師の末永幸歩さんによる、「表現」をめぐる対談をお送りする。現代を生きる私たちにとって、なぜ自分の「興味のタネ」や「疑問・違和感」から目をそらさずに生きていくことが大切なのだろうか? 全3回にわたってお送りする(構成/高関進)。

仕事もアートも「動機」が肝心ぺんてるの創業記念イベント「PentelDay」では、同社会長・社長含む8名の役員らが、末永幸歩さんによる「アート思考」の授業」を受講した。写真前列中央がぺんてる社長の小野裕之さん

変化の時代に必要なのは
「方法」ではない

※参考
価値ある仕事は「上位目標」から生まれる
──【アート思考対談】ぺんてる社長・小野裕之さん[第1回]

小野裕之(以下、小野) 末永さんは『13歳からのアート思考』で、大人が子どものように「興味のタネ」を見つけ、探究することの重要性を説かれています。そういう「タネ」を見つけるコツやトレーニングは、あるのでしょうか?

末永幸歩(以下、末永) 本には、読者に「アートはこういうものだよ、表現ってこういうことだよ」ということを伝えるための比喩を、イラストにして載せてあります。

仕事もアートも「動機」が肝心

 これは架空の植物ですが、植物というと地表に咲いている「花」の部分、アートでいえば「作品」の部分に注目しがちです。でも植物には、「タネ」から生じた大きな「根っこ」が伸びています。この地下の部分、タネから根っこの部分の「アート思考」が、作品以上に大切なんです。

 興味のタネが7色なのは、「私はこれが大好き」「これがやりたい」という一色の強い思いだけでなくていいからです。興味があること、とにかくやってみたいこと、疑問や違和感が七色に混じり合っている。

 自分なりの疑問について考えることで、根っこは伸びていきます。1つのことを追究していく1本の太い根っこではなく、そのときの興味から出た短い根っこでもいいし、いろんな寄り道をする曲がりくねった根っこでもいい。四方八方に根っこを伸ばして、一見とりとめなくいろんなことをやっているように見えても、大きな視点で見たときには、それらが1つにつながっています。

 こういう根っこがそれぞれの方向に伸びきったとき、自分なりの「表現の花」は自ずと咲きはじめます。それは、あえて他人と「差別化」して変わったことをしようと思わなくても、ほかの人とは違う花=自分なりの答えで、人とは違う新しい表現です。そのすべてのはじまりが、興味のタネなんです。

小野 企業経営においても、目まぐるしく変わっていく時代に合わせ、ビジョンをもっと大きくしていこうというとき、今までの方法にこだわっているとなかなか先には行けません。そういう意味では、「方法」より「理由・動機」が重要です。

 それが末永さんが言うところの「興味のタネ」に近いものだと思います。そういうものを大切にしていくことが、「表現するよろこびをはぐくむ」ために踏み出すことにもつながっていると思います。