問題意識をもって
繰り返しチャレンジすることでつく力

末永 会社でも、社員の方は仕事をしていていろいろな課題を感じていると思います。小野さんご自身の経験で、そのような課題を感じたときの対処のコツなどはあるのでしょうか?

小野 私自身はつねに問題意識をもってやってきたつもりですが、そんな気持ちは、ぺんてるで働いてきた経験のなかで生まれたものです。今もそうですが、ぺんてるにはもともと、チャレンジ精神を養うために、若いうちからいろいろ仕事を任せる社風があるんです。

 私は30歳のときフランスに赴任しました。そこで、当時の私には無理難題としか思えない仕事、たとえば「代理店を吸収合併してくれ」とか「販売会社を何社か設立しろ」というような仕事を任されたんです。当時、フランスには生産工場ぐらいしかありませんでしたから、何から始めればいいか全然わからない状況でした。

 しかし私も若かったですし、性格的にもわりと前向きなところもあって、「悩むよりはまずやってみるか」と思ってやってみたんですね。当然のことながら思いどおりにはいかず、いろいろな挫折や失敗をしながらでしたが、とにかく仕事を続けました。当時は休みもなかったり寝る間も惜しんでという状況でしたが、最終的にゴールにたどり着いたときのことは強く印象に残っていますね。仕事の結果を出せたのもさることながら、「自分がひと回り大きくなった!」という成長の手応えがとにかくうれしかったんです。

 成長のきっかけは、会社から与えられたテーマに取り組んだことですが、人から言われてやるだけでなく、自分からも積極的に果敢に挑戦していかないと成長は望めません。チャレンジは、間違いなく自分の成長を促します。ですから普段の仕事のなかでも、つねに問題意識をもって果敢にチャレンジしていく。それを繰り返していくことが大切だと日頃から思っています。

第3回に続く

◆対談者プロフィール◆
小野裕之(おの・ひろゆき)
ぺんてる株式会社代表取締役社長
1958年生まれ。東京理科大学理工学部卒業。1982年、ぺんてる入社。1989年よりユーロぺんてるに出向し、1997には欧州統括本部財務統括管理部長に就任。その後、工場管理部次長、経営戦略室長、執行役員、取締役生産本部長などを経て、2020年より現職。

末永幸歩(すえなが・ゆきほ)
美術教師/浦和大学こども学部講師/東京学芸大学個人研究員/アーティスト
東京都出身。武蔵野美術大学造形学部卒業、東京学芸大学大学院教育学研究科(美術教育)修了。「絵を描く」「ものをつくる」「美術史の知識を得る」といった知識・技術偏重型の美術教育に問題意識を持ち、アートを通して「ものの見方を広げる」ことに力点を置いたユニークな授業を、東京学芸大学附属国際中等教育学校や都内公立中学校で展開。生徒たちからは「美術がこんなに楽しかったなんて!」「物事を考えるための基本がわかる授業」と大きな反響を得ている。
自らもアーティスト活動を行うとともに、内発的な興味・好奇心・疑問から創造的な活動を育む子ども向けのアートワークショップや、出張授業・研修・講演など、大人に向けたアートの授業も行っている。初の著書『「自分だけの答え」が見つかる 13歳からのアート思考』(ダイヤモンド社)が16万部超のベストセラーに。オンラインで受講できるUdemy講座「大人こそ受けたい『アート思考』の授業──瀬戸内海に浮かぶアートの島・直島で3つの力を磨く」を2021年5月に開講。