取引先の担当者からのセクハラは
「カスタマーハラスメント」に当たる

 翌日、D社長は社長室を訪れたE社労士に、「突然乙社から取引を停止すると言われて困っています」と打ち明けた。驚いたE社労士が理由を尋ねると、D社長はこの事態に至った詳細を説明した。

 話を聞き終えたE社労士はD社長に

「要するにB子さんはC部長からカスハラを受けていたということですね」

 と言った。D社長は首を傾げながら質問した。

「カスハラって何ですか?」

<カスタマーハラスメント(以下、「カスハラ」)とは>
 ○企業や、企業の従業員に対して利用客、顧客、消費者などが行うハラスメントのことを指す。
 ○カスハラの種類には、「暴力や暴言」「悪質なクレームを繰り返す」の他に、「おわびの金品の要求」「SNS等を利用して中傷行為を行う」などがある。また、この例のように、取引先の担当者から受けたセクハラ行為もカスハラである。                   
 ○カスハラが発生する理由は、顧客至上主義による権利意識や要求の高まりなどが考えられる。

社員がカスハラに遭ったとき、
会社がするべきことは?

 E社労士はさらに続けた。

「現在、カスハラに対してはセクハラ、マタハラ、パワハラのような防止法はありませんが、何もしなくていいのではなく、会社には次の対処が求められます」

<衆議院厚生労働委員会の付帯決議により決められた、企業に対して求められる配慮の内容例>
(1)顧客や取引先との関係性について、直接担当する従業員ではなく、企業が明確に定めること。
(2)顧客や取引先からのカスハラに対して、どこまで顧客の要望に応じ、どの程度以上で要望を拒否するかの線引き基準を企業で定め、従業員に指示をすること。
(3)カスハラに関して、従業員からの相談に対応するなどのサポート体制の整備を行うこと。