【お寺の掲示板99】人間の悩みと仏さまの慈悲萬福寺(福岡) 投稿者:@hiro5936 [2021年6月24日]

前回に続き、「輝け!お寺の掲示板大賞2021」受賞作品をご紹介してまいります。今回は主催者からの「仏教伝道協会賞」2作品と、仮想空間にある寺院と若手僧侶の皆さんが選んだ作品1つずつをご紹介いたします。(解説/僧侶 江田智昭)

仏の知恵と慈悲を知る

 この「輝け!お寺の掲示板大賞2021」を誰が主催しているのか、ご存じの方は少ないと思います。ホテルに泊まると、客室のデスクのところに、聖書などと共にオレンジ色の表紙の『仏教聖典』が並んでいるのを見たことがあるかもしれません。あの本を配布している公益財団法人が、この主催者である仏教伝道協会(東京都港区)です。他にもいろいろと関連事業を行っていますので、ぜひ公式サイトもご覧ください。

 ということで、まずは「仏教伝道協会賞」受賞2作品からご紹介します。一つ目は、福岡県行橋市にある浄土真宗本願寺派の万福寺の作品「本当のものがわからないと 本当でないものを 本当にする」です。

 この作品は、連載87回目で取り上げていますのでご記憶の方もいらっしゃると思います。この言葉は、真宗大谷派の僧侶安田理深師の言葉であり、安田師にとっての「本当のもの」とは、「仏様の智慧」のことです。これはつまり、「仏様の智慧」を通して判断をしなければ、「本当でないものを本当に」してしまうことを表しています。

 現在、インターネットが普及した情報社会には、数多くの情報があふれています。みなさんはしっかり「本当のもの」を見分けることができていますか?

 情報化が進む現代だからこそ、「本当のものを判断する能力を持ち合わせていない」という気づきを、仏教を通して理解することが私たちにとって大切なのかもしれません。

【お寺の掲示板99】人間の悩みと仏さまの慈悲永明寺(福岡) 投稿者:@matsuzakichikai [2021年7月10日]

 二つ目の受賞作品は、北九州市八幡東区にある永明寺の「届いてます! 南無阿弥陀仏の摂取券 予約は不要 心配も無用」です。最近、『「鬼滅の刃」で学ぶ はじめての仏教』(PHP研究所)を上梓したご住職の松崎智海さんは、「バズらせる僧侶」として大変有名で、他にも著書をお持ちです。2019年には「衆生は不安よな 阿弥陀動きます」の言葉で、第2回「お寺の掲示板大賞」を受賞しています。

 2021年春から夏にかけて、新型コロナウイルスのワクチン接種予約がなかなかできずに焦る経験をした方が多かったのではないでしょうか。年末になって、オミクロン株という新たな変異株が登場し、3回目となる接種を巡って、再び同じような状況になることも予想されるだけに、みなさんのご心配も尽きないことでしょう。

 阿弥陀仏の救いは「摂取不捨(せっしゅふしゃ)」と呼ばれています。それは、「どのような者も決して見捨てることはない」ということです。自治体が発行するワクチン接種券とは異なり、阿弥陀仏の救いは予約をしなくても、すでにわたしのもとに届いています。

 親鸞聖人は和讃の中で「摂取してすてざれば 阿弥陀となづけたてまつる」とおっしゃいました。「摂取不捨」が阿弥陀仏の最大の特徴であり、すべての人々を摂取して見捨てないがゆえに、阿弥陀という仏さまが存在します。もし一人でも見捨ててしまえば、もはや阿弥陀仏とはいえないのです。