会計検査院の指摘は
果たして妥当なのか

 そもそも、会計検査院の“逆ザヤ”との指摘は妥当なものなのだろうか。というのは、国の方針としてゼロ金利政策もしくはマイナス金利政策を実施し2013年4月以降長年にわたって維持されてきたのであり、住宅ローンの金利は短期プライムレートに連動、短期プライムレートは政策金利と連動しているため、住宅ローン金利が低位に誘導されることは自明の理であったからだ。

 その時々の金融政策の改変によって、住宅を購入して住宅ローンを借りた人が損害を被ったり、利益を得たりするケースは避けられないのだから、住宅ローン金利が歴史的低水準であることと、住宅ローン税制で政策意図をもって控除率を別途設定することとは何ら矛盾しないと筆者は考えている。

 現に、財務省は過去、住宅ローン減税の控除率を2%に引き上げる案を当時の自民税調に提出したこともあるくらいだから、政策金利が低位に導かれていることと、住宅ローン減税の控除率もしくはローン元本の上限から導かれる控除額が増えることとは直接的な関連がなく、切り離して考えるべきだろう。

 また、年間の金利負担分より控除分の金額が上回ってしまう“逆ザヤ”を解消することを目的とするのであれば、年間の住宅ローン金利分を申告して、その金額の範囲内で控除すれば済むことである。

 実際、会計検査院の「逆ザヤ」との指摘に対し、与党税調による税制改正大綱の議論では控除率こそ引き下げたものの、一律控除は変えていない。このことから会計検査院の指摘をそのまま受け入れているようには思えず、会計検査院の指摘は当たらないと考えている可能性もある。