「タマリ」を突き止めた
特捜とマルサ

 脱税は立件が難しい事件とイメージされるが、内偵を積み重ねて「タマリ(隠していた現金や高価な物品などの現物)」のありかを突き止められたら、意外にすんなりと捜査(マルサ単独の場合は「強制調査」)は進む。

 脱税というのは預金通帳の入金記録など証拠が残ることを嫌い、現金や金塊などとして隠すケースが多い。タマリが見つかり、どういう経緯の所得だったか説明できなければ「無申告」というわけだ。よく多額の現金が袋詰めにされて山林などで見つかったニュースが報じられるが、査察を含めた都合の悪い税務調査を察知した個人や法人幹部が証拠隠滅を図ろうとしたためといわれている。

 今回、田中被告が脱税とされたのは(1)籔本被告からの7500万円、(2)金沢市の建設業者から3000万円、(3)大阪府の設計会社から1000万円、(4)井ノ口被告から300万円――とされる。ここまでタマリの原資について明らかになったというのは、特捜部とマルサが綿密かつ詳細に金の流れを詰めていたことを示している。

 脱税の共犯として立件される可能性が濃厚な田中被告の妻は体調を崩して入院中で、特捜部はいまだ事情聴取していない。長年にわたり捜査当局のターゲットとされながら暴かれなかったマンモス大学の闇。今年最大の特捜事件は越年する可能性もある。