国崎信江国崎 信江(くにざき のぶえ)
危機管理教育研究所 代表
危機管理アドバイザー
横浜市生まれ。危機管理アドバイザー。危機管理教育研究所代表。 女性として、生活者の視点で防災・防犯・事故防止対策を提唱している。文部科学省地震調査研究推進本部政策委員、防災科学技術委員などを務める。また、NPO国境なき技師団の一員として、海外での防災教育活動なども行なっている。現在は講演活動を中心にテレビや新聞など各メディアでも情報提供を行っている。著書に『決定版!巨大地震から子どもを守る50の方法』(ブロンズ新社)『サバイバルブック―大地震発生その時どうする? 』(日本経済新聞出版社)などがある。

 3.11以降、国民の防災意識は大きく高まったが、1年半が過ぎた現在、早くもその熱が冷めてきた感もある。ある調査によれば、震災後「何らかの防災対策をした」という人は約6割で、残りの4割の人は「やろうと思いつつ、まだやっていない」という。

 しかし、日本列島は現在も巨大地震活動期にあることが指摘されている。首都直下地震、南海トラフ巨大地震など、今後30年以内にマグニチュード7クラスの地震が発生する確率は70%以上という高い評価になっている。明日大地震が起こってもおかしくない状況のなかで、我々は何をするべきか。防災に関する講演や執筆活動も行う、危機管理アドバイザーの国崎信江氏はこう指摘する。

 「食料の備蓄や非常用持ち出し袋の準備は大事なことですが、最優先事項とはいえません。なぜならそれは、“死なないこと”が前提の対策だからです。多くの人は漠然と、地震が起こっても自分は死なないと思っていますが、そう思える根拠は何でしょうか。大事なのは、地震が起きたときに生き残ること。そのためには家や地盤というハード面での対策を実施するべきでしょう」

 具体的には耐震診断・補強の実施や、地震に強い家を選ぶことを指す。一つずつ説明してもらおう。

新耐震基準移行の建物でも
安心できない!

 住宅の耐震性能を測る基準として広く知られているのは、「新耐震基準」を満たしているかどうかだ。そのため多くの人が、81年の新耐震基準設置以降に建てられた住宅はひとまず安全だと信じているのではないだろうか。だが、これについて国崎氏は異論を唱える。

「耐震基準はあくまでも目安。新耐震直後に建てられた住宅はもはや築30年近くになります。建築時の耐震基準はもちろんですが、それ以上に、日頃のメンテナンスの有無が問われます。

 同じ30歳でも人によって健康状態が全く違うように、定期的なメンテナンスをしていない家は、非常に危険な状態にあるかもしれません。実は、耐震性が落ちているということもあるのです。耐震基準を満たしているかどうかではなく、“わが家は今現在で、震度いくつまで耐えられるか”を知る必要があります。目標は震度7に耐えられる家を常に維持することです」