CO2などが排出されず
環境にも優しいのが特徴

異種金属を接合する摩擦圧接技術を確立 複合材の提供で新たなマーケットに挑む代表取締役・大橋正明氏

 では、摩擦圧接技術のメリットは何か。一つ目が耐久性とコストの両立。耐久性のある材料は高価だが、必要な部分にのみそれを使い、他は安価な材料を使用することが可能となる。

 二つ目が部材の高機能化、多機能化が図れること。例えばアルミとニッケルを接合すれば、軽量と硬さの両立が実現する。

 三つ目が従来の接合技術による部品以上の強度の実現。四つ目として、「他の溶接に比べCO2や粉じん、ガスを排出しないため環境に優しいのも特徴です」と大橋氏は言う。

 同社では現在進行形でさまざまな異種金属接合の試験に取り組んでいるが、既に成功しているステンレスとSTKMパイプの接合については電子機器のコピーローラーに採用。軽量化、材料費低減に高速化も実現し、納入実績を上げている。

異種金属を接合する摩擦圧接技術を確立 複合材の提供で新たなマーケットに挑む異なる金属を接合し、倒れにくい花瓶(左)、回しやすい金属こま(右)など産業用機械以外への応用も構想中
●株式会社大橋鉄工 事業内容/産業用部品製造、従業員数/32人、売上高/4億3000万円(2020年度)、所在地/滋賀県長浜市三ツ矢町11-7、電話/0749-63-5611

 同種金属接合についても摩擦接合への代替ニーズが生まれており、「ボルトによる組み付けを摩擦接合に換えれば、部品点数の削減、ボルト穴加工・組み付けの工程削減、ねじ重量分の軽量化が可能となります」と大橋氏。アクチュエーター部品として、ステンレス同士の摩擦接合のニーズが高く、量産体制に入る構えだ。

 摩擦圧接技術の応用は、産業用機械にとどまらない。同社では下に重いニッケル、上に軽いアルミを接合した花瓶や金属こまなどを試作。新しい分野だけに、「これまでの取引分野に限らず、BtoCも含め、さまざまな業種業界からご意見やご要望を頂き、連携しながら市場を広げていきたい」と意気込む。

 指示通りのものを作るだけの下請け企業のままで終わりたくないという強い思いもあり、新たな分野に挑んだ同社。摩擦圧接という技術が、どうマーケットを開いていくのか注目したい。

(「しんきん経営情報」2022年1月号掲載、協力/長浜信用金庫