私はズバリ答えました。

「まさにそうなんです。子どもの自己肯定感を育みたいからこそ、お母さんの“できたこと”が大事なんです」

 親子できたことノートは、毎日子どもと一緒に親も“できたこと”を書いていきます。その“できたこと”にお互いにシールを貼ったりコメントしたりして承認するのです。

 1日たった10分のとてもシンプルな活動ですが、承認し合うことによって、自己肯定感が向上することはもちろん、次第に親との信頼関係が深まっていきます。それが、学校や社会において他者との人間関係を作る基盤となっていくのです。

親の書く“できたこと”は小さなことでOK!

 親子できたことノートを開発するときに、モニター20人に集まってもらって使い方をレクチャーしたあと、3カ月のトライアルをしました。1カ月ごとにノートを持ってきてもらい、成果や課題を話し合っていきました。

 そこに来ていた、小学校1年生(6歳)の女の子のあるお母さんは悩んだ様子で、こう話されました。
「私のできたことを書こうとするのですが、“こんなレベルでいいの?”と考えてしまって、どうしても書けないのです」

 お話を伺うと、その方は大手の流通関係の会社にお勤めで、マネージャーをされているとのこと。会社ではいつも部下の行動を指導されている立場だそうです。いつもレベルの高い行動を促しているので、いざ、自分の“できたこと”と言われても、“こんなレベルのことができたことと言えるだろうか?”と疑問を持ってしまい、筆が進まないと言うのです。