本書の要点

(1)日本映画界の巨匠・黒澤明監督は大物役者や下っ端スタッフの区別なく心配りする人物だった。チームが最高のパフォーマンスを出せるようにすることが真のマネジメントである。
(2)超短納期の仕事をダジャレで乗り切ったコピーライターのひすいこたろうからは、正念場の乗り越え方を学べる。
(3)締め切り前日に描き上げた原稿を編集者の不注意で紛失された赤塚不二夫は、顔面蒼白の編集者を思いやる行動を取った。これが本当の優しさである。

要約本文

◆一流の人の考え方
◇成功を他人のモノサシで測るな

 最初のクイズは、イチローがインタビューで語った「嫌いな言葉」だ。野球選手として華々しい活躍をしてきたイチローだが、野球に対するストイックな姿勢がビジネス書で取り上げられることも多々あった。そんな彼の「嫌いな言葉」とはいったい何なのか。

 その答えは、「成功」である。成功といっても、自分が立てた目標を成し遂げたことを指して成功と呼ぶのはいい。しかしそうではなく、もし他人が言う成功を追いかけているなら、何が成功かわからなくなる、とイチローは言う。

 他人の評価に惑わされず、自分の基準で成功を定義することが大切だ。それを達成してこそ「成功」という言葉は意味を持つ。

◇マネジメントの極意

 日本映画界の巨匠であり、完璧主義としても知られる監督・黒澤明は、撮影時間はかならず朝9時から夕方5時までと決めていたという。その理由は何か、おわかりだろうか。

 答えは「下っ端のスタッフに、撮影の準備と後片付けの時間を十分に与えるため」である。朝9時から撮影をスタートするには早朝5時から準備する必要がある。そして後片付けは、夕方5時に撮影が終わったとしても夜11時までかかる。もし撮影時間が延びてしまったら、そのしわ寄せが来るのは下っ端のスタッフであり、彼らの寝る時間がなくなってしまう。