そんなワーキングメモリを鍛える方法のひとつが、有酸素運動だ。ウォーキングやジョギング、サイクリングなどの有酸素運動は、ワーキングメモリの強化に適していると考えられている。

着実に成長を辿るには
長期記憶も欠かせない

 ワーキングメモリは、効率的に成果を得るために必要な能力のひとつだ。ただし、人間にとっては長期記憶も重要である。新しい目標にチャレンジするとき、それまで積み重ねてきたトレーニングや習慣が無駄になるわけではない。むしろ長期記憶の蓄積があるからこそ、チャレンジが成功することも多い。

 脳内のネットワークをスムーズに構築するには、長期記憶を司る海馬の働きが欠かせない。一度習得した運動でも時間が経つと忘れてしまい、再現するのは簡単ではないからだ。習得した運動を正しく再現するには、海馬の働きが鍵となる。

「海馬は、情報の内容を保存し、その記憶を固定化するために重要な役割を果たしています。海馬がどの情報を長期記憶に送るか、どの情報が不要なのかを決めているのです」(『Life Kinetik(R) 脳が活性化する世界最先端の方法』より)

 たとえば、ランニング中に疲れやすくなった場合、無自覚のうちにフォームが崩れていることが多い。久しぶりのゴルフで思うように飛距離が伸びないのも、間違ったグリップやスイングが原因のことがある。つまり、脳が正しい方法を再現できなくなくなり、運動機能にも影響を及ぼしているのだ。ワンステップ上の課題にチャレンジしたくても、基本の部分が崩れてしまっては、成長は見込めない。これに深く関わるのが海馬である。

 さらに同書によると、「海馬の真の特技は、適切な刺激を受けると新しい細胞をつくることです」とある。海馬は脳の活性化を支える器官とも考えられている、重要な器官なのだ。