大分県日田市バイオマス資源化センター大分県日田市バイオマス資源化センター。国内には畜産のふん尿や家庭の生ゴミなどを集めて発電したり、たい肥にしたりする施設があるが、まだまだ未利用資源は多い Photo:JIJI

日本の農業は「四重苦」に陥っている。海外に依存してきた肥料や燃料といった食料安全保障に欠かせない戦略物資の価格が高騰しているのだ。だが、肥料などの調達・流通で高いシェアを握るJA全農の一手次第では、ピンチをチャンスに変える可能性を秘めている。(ダイヤモンド編集部 千本木啓文)

中国のさじ加減一つで
食料生産が危機に瀕する脆弱性

 かつてJA全農では“ドル箱”の肥料、飼料、燃料が「三料」と称され、それらを扱う事業部は、経営トップを輩出する名門として組織内に君臨してきた。

 三料は農業に欠かせない戦略物資である。だからこそ全農は、海外の資源会社と長期契約を結んで肥料原料を確保したり、飼料を輸入するための施設を建設したりして安定確保に努めてきた。

 ところが、新型コロナウイルスの感染拡大によるサプライチェーンの混乱や、日本経済の停滞による円安傾向などで、輸入品に依存してきた三料はいずれも高騰し、農家の経営を圧迫している。

 これら三料の高騰に、農業トラクターに欠かせない尿素水(ディーゼルエンジンの排ガスに含まれる窒素酸化物〈NOx〉を除去するのに使われる)の品薄を加えると、農業は「四重苦」に陥っているといえる。

 それでも実は、この四重苦は日本の農業にとって“千載一遇のチャンス”になる可能性も秘めている。

 どういうことか。以降で詳しく解説していく。