(1)チームのミッション(ビジョンと戦略)を明確に決めること
(2)そのミッションに向かっていくプロセスを管理すること
(3)メンバーを育成すること
(4)チームのパフォーマンスを評価すること
(5)チームの「代表」として、必要なリソース(資源)を確保すること

 これらのうち、(3)を実現するためによきコーチでなくてはならない、というのはわかりやすいでしょう。(2)も、単なる事務的なプロセス管理ではなく、チームのミッションに貢献しながら成長していってくれるように伴走することと捉えれば、コーチとしての側面がイメージできると思います。

(1)は、コーチが行うべき目標管理とも言えます。メンバーは、日々の業務に追われていると、長期的な目標でもあるミッションをつい忘れがちです。そこで、そのことを忘れないようサポートするのがマネジャー(コーチ)の仕事というわけです。

 それに、どのようなミッションを掲げるかは、メンバーのモチベーションアップにも影響します。(3)を実現させるうえでも、コーチとして(1)は軽視できない重要な仕事と言えます。

(4)と(5)は、マネジャーはメンバー一人ひとりのコーチであると同時に、チーム全体の「監督」であり、経営メンバーの一人でもあるということ。

 要するに、チームのミッション達成とメンバー個人の成長を両立させ、個人の成長をチームの成果につなげて、会社全体にいい影響をもたらしていくことが、コーチとしてのマネジャーの役割であり、コーチングの目的です。

最高のコーチングセッションとは?

 Googleの元コーチングディレクターで、デイビッド・ピーターソンさんという方がいます。僕が接してきた中では、「世界トップのコーチ」の一人と言っても過言ではない人です。

 彼はミネソタ大学でPh.D.(博士号)を取ったのち、全米にコーチングを広めたPDIという会社でコーチングディレクターになりました。Googleに入る前に、ずっとアメリカ中を回って経営者のコーチングをしていたエグゼクティブコーチングのプロフェッショナルです。

 僕がGoogleにいた時、彼がある研修会で面白いことを言いました。僕自身のコーチング経験を振り返ってみてもすごく納得できる言葉です。それは「今まで経験した最高のコーチングセッションは?」という質問への答えでした。

「ある社長が部屋に入ってきたので私は挨拶した。そしてセッションが始まると、私は最後まで一言もしゃべらなかった。それが最高のセッションだった」

 では、なぜこれが、最高のコーチングセッションなのか?