藤井聡太に勝った棋士たち

 藤井は棋士になってこれまで、公式戦の番勝負では負けたことがない。理屈としては番数をたくさん指せば指すだけ、実力に近い結果が生じる。

 しかし各棋士との一番勝負の連続のトーナメントでは、そうすんなりと全部勝ち抜けるわけではない。現にこれまで藤井は、棋王戦と王座戦で挑戦権を獲得する前に敗退してきた。若干不利な後手番を引いて、そのまま押し切られてしまうというケースもある。

 2021年、王座戦のトーナメントで藤井を止めたのは深浦康市九段だった。このとき藤井は19連勝中で、その記録もまた止まった。

 深浦はさらに早指しのNHK杯でも藤井に勝っている。深浦は藤井に対して通算3勝1敗。藤井に対して2番勝ち越している棋士は現在、深浦のほかにいない。深浦の存在は報道でも大きく取り上げられ、「地球代表」という異名がさらに広く知れ渡ることになった。

 深浦は現在49歳。かつて羽生など上位の棋士に真っ向から勝負していったガッツは、いささかも衰えていない。今後も藤井との対戦は注目され続けるだろう。