米金融市場では、ESG(環境・社会・企業統治)に基づいて企業にスコアを付け、投資家が「穴」に落ちるのを防ぐことが、投資の潮流として最も注目されている。スイスの金融大手クレディ・スイス・グループの株主はそのESGスコアに基づき、ガバナンス面での問題発生を予期していたかもしれないが、それには「格付け会社の選定が正しければ」という条件が付く。クレディ・スイスは格付け会社ごとに「優」「不可」「可」といった評価を受けていたため、どれかは正しいと言えるはずだ。クレディ・スイスではこのほど、アントニオ・オルタオソリオ会長が辞任した。新型コロナウイルス関連の隔離規則に繰り返し違反していたことが判明したためだ。また、現在の最高経営責任者(CEO)が就任したのは、元社員に対する内偵行為の発覚を受けて前任者が辞任に追い込まれたことがきっかけだった。同社の取締役会は、経営破綻した米投資会社アルケゴス・キャピタル・マネジメントと英金融サービス会社グリーンシル・キャピタルへの融資に絡み、リスクコントロールに失敗し巨額の損失が出たと報告。これを受けて、オルタオソリオ氏と現CEOはクレディ・スイスの再建に取り組んできた。