一世を風靡(ふうび)したピロリ菌除菌ではあるが、どうやら治療法としては間違いだったことになりそうだ。しかし、健康保険を適用してしまった以上、方向転換は難しい。

 いずれにせよ、ピロリ菌を除菌した人でも安心せずに内視鏡検査で自分の胃の状況を確認することが肝要だ。

 さらに2018年頃から、世界中の研究者らはピロリ菌だけではなく乳酸菌によって胃がんの発症と進行が促進されると言い始めた、日本低フォドマップ食推進会会長で日本消化器病学会指導医・専門医の宇野良治医師は言う。

「胃のピロリ菌感染だけでなく、強力な胃酸抑制薬を服用している場合も、胃がんの発生が増えます。両者ともに胃のpHが上昇しますが、これは乳酸菌が胃内で容易に増殖できる環境です。健常な胃には乳酸菌はいません。胃内粘膜の乳酸菌が増加したら、慢性胃炎、胃がんにかかっている可能性が高いでしょう」

 乳酸菌の解糖によって生じる乳糖はがん細胞成長促進作用があるため、乳酸菌によって胃がんが発症するのだという。

プロバイオティクスの摂取で
過敏性腸症候群が起きるリスク

 過敏性腸症候群(IBS)というおなかの病気がある。慢性的な腹痛や便秘・下痢を伴い、本当に大変な病気なのだが、精神的なストレスが原因ではないか、自己免疫疾患ではないか、などいろいろいわれてきた。医療の現場でも、「原因がわからないので、ストレスでしょう」と下痢止めを渡されるのが一般的だ。

 しかしまったく原因が違っていたらしいのだ。