以上のような事情にもかかわらず、子どもは、親の金融資産の運用について知らない場合が多いし、関与しない場合が多い。

 しかし親の側でも、自分の経済状況が子どもと「連結」していることを意識していない場合があり、自分の資産を漠然と運用していることが多い。もっと言うなら、金融機関の言いなりになって無駄な手数料を支払いながら、非効率的な運用を行っている残念なケースが少なくない。

 加えて、いわゆるファイナンシャルプランニングにあっても、「高齢になったら、債券や預金などリスクの小さい資産の割合を増やしましょう」とか「年金と合わせて資産のインカムゲインを生活費に充てるようにするといい」といった、高齢者「単体」ベースで、しかもしばしば効率の悪い(すなわち、運用として誤っている)アドバイスを行いがちだ。

 子どもは、少なくとも親の金融資産の状況に関心を持つべきだ。経験的に言って、子どもが親の資産に注意しておくだけで避けられたと考えられる「損」が方々で発生している。

親と子どもの共同作業
「2世代運用」のすすめ

 本稿では、親と子どもが協同して親の資産の運用を行う「2世代運用」をおすすめしたい。

 住宅の世界で、親家族と子家族が同居するように造られた「2世帯住宅」という言葉を聞くことはあるが、「2世代運用」という言葉は、まだ耳慣れないかもしれない。だが、これは、2世帯宅以上に汎用性があって、かつ重要な考え方であるように思う。

 人生の最晩年にあって、個人差はあるが、数年から長い場合は十数年にわたって、金融資産のハンドリングを含めて、判断が覚束なくなる時期がある。金融資産が親子で「連結」して保有されているものだと考えた場合、この時期に資産を現金化して運用を休んだり、金融機関の言いなりで不適切な運用を行ったりするのは大変もったいない。子どもの協力の下に「普通に」運用を続けた方が効率がいい。

 一般に高齢者は債券・預金の比率を増やせと言われるし、相続の際には資産が現金化の上で分配され、その後になかなか再投資されない。つまり、人の最晩年期から相続の前後に掛けて、社会全体としても資産が現金化する現象が起こっている。「貯蓄から、投資へ」の逆流が起きているということだ。