東証再編が誘発!上場廃止ラッシュ#3Photo:PIXTA

スタンダード市場の流通株式時価総額の基準は10億円以上で、最上位になるプライム市場の10分の1にすぎない。その小さな必達目標の、さらに半分にも満たない時価総額に苦しむ絶対絶命の企業は、卸売業や繊維製品など十数社に上っている。特集『東証再編が誘発! 上場廃止ラッシュ』(全15回)の#3では、こうした企業を実名で紹介する。(ダイヤモンド編集部編集委員 清水理裕)

スタンダードから落ちれば「地獄行き」
基準の半分にも満たない15社の実名

 東京証券取引所は現在の1部、2部、ジャスダック、マザーズの4市場をプライム、スタンダード、グロースの三つに再編する。今回取り上げるスタンダード市場は、2部、ジャスダックが母体となる。

 スタンダードの上場維持基準は、はっきり言って緩い。数ある基準の中でクリアするのが最も厳しいのが「流通株式時価総額」である。このこと自体はプライム市場と変わらない。だが、スタンダードが求めている水準はプライムの10分の1である10億円以上にすぎない。

 それでも、この低い基準に引っ掛かり、基準到達に向けた計画書(改善計画書)に10億円未満の流通時価総額を書き込んだ猶予企業は、132社も出た。

 この数値をダイヤモンド編集部は手作業で拾い上げ、ワースト70位までを上場廃止危険度ランキングで整理した。

 プライム市場で上場廃止になる企業の場合、スタンダードなど下位の市場で新たに上場手続きを進める手もある。だが、基準が緩いスタンダードにすら残れない企業は、市場から完全に放逐される可能性が高い。

 基準への抵触で上場廃止に追い込まれる企業が陥る苦境について、大手証券幹部は「地獄に行くのと同じだ」と厳しい表現をする。

 この幹部によると、株主が大勢いるまま上場廃止になると、東証の適時開示はなくなるものの、金融商品取引法上、有価証券報告書を出す義務が依然残るというのだ。当然、有報を作成する費用が発生し続ける。

 さらに、これまで信託銀行に代行させていた株主名簿の管理や株主総会の開催などに関連する業務を、自社でしなければならなくなるという。この幹部は「トータルで考えると、上場廃止にされたのに、これまで掛かっていた労力や費用が逆に増える可能性すらある」と指摘する。これは確かに、つら過ぎる状況だ。

 この“地獄”を回避する手段はある。MBO(経営陣が参加する買収)で会社を非上場化するのだ。既存の株主から株式を買い上げて株主数を大幅に減らせば、「有報の提出義務がなくなり、株主名簿の管理業務も楽になる」(同幹部)という。

 ただ、実行するにはかなりのお金がかかる。そもそもMBOは財務体質が良くなければ、できない相談だ(このあたりの事情については、本特集の♯14『非上場化しやすい会社ランキング【150社】村上ファンドに狙われる!?将来のMBOを大予想』で詳述する)。

 上場廃止危険度ランキングのワースト15社までは、流通時価総額基準の半分にも満たなかった。「地獄に落ちる」可能性が高い、その実名を確認していこう。