従業員や地域への分配を増やしたり、市場再編で上昇する上場維持コストを回避したりと、非上場化の意義やメリットは大きくなりつつある。そこで特集『東証再編が誘発! 上場廃止ラッシュ』(全15回)の#14では、大手銀行が実際に用いる「MBOレシオ」を使い、「非上場化しやすい会社ランキング」を作成した。現預金を大量に抱えたこうした企業は村上ファンドのようなアクティビストにも狙われやすく、個人投資家も一見の価値がある。(ダイヤモンド編集部編集委員 清水理裕)
MBOで即座に資金回収できる16社の実名
銀行が実際に使う「MBOレシオ」で独自ランキング作成
東京証券取引所による4月の市場再編で、流通株式時価総額など上場維持基準が厳しくなる。最上位のプライム市場に残ろうとすれば、英文などの情報開示が新たに義務付けられ、上場維持コストもこれから大きく跳ね上がる。
一方、非上場企業になれば、こうしたコスト増が回避できる。さらに本特集の#13『年収が「非上場化」で上がる会社ランキング』で紹介したように、経営者が株主の目を気にせずに、従業員が納得できる給料を払えるようになる。
また、稼いだ利益についても、株主への配当一辺倒ではなく、その会社や従業員がよって立つ、地域経済の活性化を促すような使い方が選択しやすくなるだろう。
そこで今回は、巨額の設備投資が不要で安定的に稼げている企業、市場から特に資金調達する必要がない企業に対し、「非上場化のすすめ」を提示してみたい。
そのために作成したのが「非上場化しやすい会社ランキング」である。上場企業を非公開化する際、一般的に取られる手段がMBO(経営陣による買収)だ。MBOは既存株主から株式の大半を買い集めるため、多額の資金が必要になる。経営陣は通常、借金をしてMBOを実施する。
この資金を融通できるか判断するのに、大手銀行が実際に使っている指標として「MBOレシオ」がある。今回ダイヤモンド編集部は、銀行や大手証券への取材で、この指標の詳細を確かめた上で計算。全上場企業を対象にランキングした。
全ての株式を市場から買い取る買収金額は、時価総額の実額ではなく、時価に30%のプレミアムを乗せて考えられている。30%高めに設定した買収金額よりも、ネットキャッシュ(現預金-有利子負債)の保有金額が多い企業が何と、16社もあることが分かった。
日経平均株価は2万7000円を上回る水準だ。足元は歴史的に株高の環境にあるのに、まだまだとんでもない安値で放置されている企業は多いのだ。
こうした会社を買収できれば即座に資金回収ができる。村上ファンドのようなアクティビスト(物言う株主)に目を付けられやすいゆえんである。先回りできれば投資効果は大きく、今回のランキングは個人投資家も必見である。
この16社以外にも、設備投資額を差し引いた利益で資金回収できる期間が3年以内と短い「MBOオススメ企業」が85社あった。通常7~8年以内であれば、銀行が資金を貸せる世界である。要するに、ものすごくMBOしやすい会社が国内に多く存在するのだ。
それでは、その実名を確認していこう。