東証再編が誘発!上場廃止ラッシュ#8Photo:PIXTA

PER(株価収益率)は市場が下す企業の評価である。業績とは異なり、企業が自分でコントロールできるものではない。それなのに、守れなければ上場廃止に追い込まれる改善計画書に、高いPER目標を書き込んだ会社が続出している。特集『東証再編が誘発! 上場廃止ラッシュ』(全15回)の#8では、独自ランキングで、そのあきれた実態を検証する。(ダイヤモンド編集部編集委員 清水理裕)

上場維持の前提に高過ぎるPER
赤字なのに東証1部平均の2倍超続出

 東京証券取引所が4月に再編する新市場で、上場維持基準の中でも特にクリアするのが難しいのは、「流通株式時価総額」だ。プライム市場の場合、100億円以上を維持しなければならない。

 基準に満たない企業は、一定期限内にこの金額を引き上げなければ、上場廃止に追い込まれる。回避の手段は次の三つだ。

(1)業績を伸ばして株価を上げる。

(2)PER(株価収益率)など市場からの評価を高めて株価を上げる。

(3)流通株式比率を上げる。

(1)の業績向上策は、本特集の#5『上場基準「売上高目標高すぎ」企業ランキング』などで、その現実妥当性を検証した。仮説に仮説を重ねた無理な計画が多かった。

 今回は(2)のPERを取り上げる。PERは株価÷1株当たり純利益で計算でき、時価総額÷純利益とも表せる。ある企業の市場価値が、その企業の稼ぎの何年分と評価されているかを判断する指標だ。将来性がある企業ほど、この倍率が高くなる傾向がある。

 上場基準に届かず、基準到達に向けた計画書(改善計画書)を提出した企業は約560社。このうち、基準到達時のシナリオにPER目標を盛り込んだ企業が108社あった。

 基準未達企業にもかかわらず、その多くが高過ぎるPER目標を設定していた。東証1部の平均値(1月12日終値ベースで15.29倍)を上回っていたのが65社。平均値の2倍より高い31倍超の企業が12社あった。

 外資系投資ファンド幹部は「30倍超のPER目標は狂気の沙汰だ。そんなに将来性がある企業なら、そもそも基準を満たしているはず」と手厳しい。

 上位12社の中には、赤字で直近のPERが計算不能なのに35倍や43.5倍といった非常に高い市場評価を設定する企業もあった。こうした企業の実名を確認しよう。