市場の活性化を主目的に行われる今回の東証再編だが、投資家らには「骨抜きにされた」と失望も広がる。いったい東証再編の何が問題か。特集『東証再編が誘発! 上場廃止ラッシュ』(全15回)の#11は覆面座談会の前編で、市場のプロたちに率直に語ってもらう。(ダイヤモンド編集部 重石岳史)
和田義雄 運用会社勤務
三善康介 A証券会社勤務
梶原景生 B証券会社勤務
大江 広 個人投資家
やっぱり「ここが変だよ」東証再編
スタンダード選択企業が意外に多かった理由
――東京証券取引所が1月11日、プライム市場など新市場区分の選択結果を公表し、4月に市場構造が再編されます。まず今回の東証再編をどのように評価していますか。
和田 そもそもなぜ再編したかというと、あまりにも1部上場の企業数が多いので減らしてほしいという機関投資家の強い要望があったから。ところが特に地方の企業から非常に大きな抵抗があり、妥協に妥協を重ねた結果、とことん骨抜きにされた。
流通株式時価総額100億円以上のバーを設けはしたが、手を挙げて「残りたい」と言えば残れる中途半端な形になった。100億円の区切りもどうかな?という感じだし、手を挙げれば希望する市場に残れるのは、やっぱり変だと思う。
三善 確かに上場企業が数社しかない地方では、上場へのこだわりが特に強い。都市部では別に珍しくもないが、地方では上場が格好いいと思っている。地方企業からすれば、東証1部のステータスがあると社員の採用や信用力の担保になる。
そういう意識があるから、「やっぱり上場は続けたい」と。それは分かるが、でもプライムに行く必要はないでしょうよ(笑)と思う企業は多い。
大江 でも地方出身の学生が東京の一流大学を卒業し、もし地元に帰るなら、「1部上場会社に勤めてほしい」というのが親心でしょうね。
梶原 最上位のプライム市場には、株価をガンガン伸ばしていくというレベルにない会社もある。外国人投資家に買ってほしいとも思っていない。「取りあえずプライムで」という消極的理由で改善計画書を出した会社も多い。
ただ私は、思っていたよりスタンダード市場を選んだ企業が多かったという印象。昨年7月の段階で664社がプライム市場の基準を満たしていないと東証が発表した当時、その大半がプライムに残ると予想していた。でもふたを開けてみれば、意外とスタンダードを選んだ企業が多いのに驚いた。
――東証1部上場の2185社の15%強に相当する344社がスタンダード市場を選択しました。スタンダードを選んだ企業は、どういった思惑を持っているのでしょうか。