プライムなど新市場の上場基準に引っ掛かった各社は、一定期限内にその基準をクリアする義務を負う。改善計画書に自ら書き込んだ売上高などの目標値を達成できなければ、待ち受けているのは上場廃止だ。特集『東証再編が誘発! 上場廃止ラッシュ』(全15回)の#5では、帳尻合わせで高過ぎる売上高を設定した企業を、ランキングで徹底検証する。(ダイヤモンド編集部編集委員 清水理裕)
口先だけの「ばら色」増収計画を見抜く
実績重視の「売上高目標高すぎ」企業ランキング
東京証券取引所で4月からスタートするプライム、スタンダード、グロース。この3市場に再編される企業について、それぞれ「上場廃止危険度ランキング」を作成し、ワースト上位を詳しく見てきた。
本特集の#2『上場廃止危険度ランキング【プライム市場200社】22位に大前研一氏の会社、1位は?』など3本の記事で注目したのは、数ある上場維持基準の中でも特にクリアするのが難しい「流通株式時価総額」だった。
基準に引っ掛かった企業は東証に、基準到達に向けた計画書(改善計画書)を出さなければならない。それにより、初めて一時的に新市場に所属することを許される。いわば「猶予企業」となるのだ。
猶予企業は、自ら決めた期限内に、現在は届いていない上場基準に到達することを誓約させられる。改善計画書に書き込んだ目標値を達成できなければ、待ち受けているのは上場廃止である。
守れなければ上場廃止に追い込まれる、この計画書を公表した企業数は約560社に上った。その全ての改善計画書から大量の数値を拾い上げ、ダイヤモンド編集部が内容を精査してみた。その結果、上場廃止回避に向けた必達目標にもかかわらず、仮定に仮定を重ねた各社の計画の非現実性が浮かび上がってきた。
具体的には、上場廃止危険度ランキングで取り上げた流通時価総額だと、上げる手段は次の三つしかない。
(1)業績を伸ばして株価を上げる。
(2)PER(株価収益率)など市場からの評価を高めて株価を上げる。
(3)流通株式比率を上げる。
今回の記事では(1)「業績を伸ばす」の中から、高過ぎる売上高目標を設定している企業を、ランキングで徹底検証する。
なお、ランキングを設計する上で、重視したのは各企業の過去の行動、実績だ。「行動は言葉よりも雄弁」という英語の格言もある通り、その企業の将来の行動を最もよく表しているのは過去の行動なのだ。
例えば、ばら色のV字回復シナリオ。口先だけなら何でも言える。猶予企業が目先の上場を維持するため、苦し紛れで描いた計画にだまされないことが肝心である。
このためランキングでは、各企業が設定した「売上高目標」に到達するのに必要な増収率と、今期含め3期の平均増収率(=過去の行動)を、一目で見比べられるように工夫した。
それでは早速、上位について確認していこう。