2007年10月の統合から5年が経過したマルハニチロホールディングス。食品業界で6社目の1兆円企業の誕生と注目されたが、度重なる不測の事態で統合による成長計画は大きく狂った。
日本の水産大手は1970年代以降、「いかに水産業から脱却するか」に腐心する苦難が続いた。
米国・ソ連(当時)などの200カイリ漁業水域宣言に端を発する世界的な漁業規制の中、各社は中核事業の遠洋漁業などの漁労事業を縮小し、水産物の買い付けや水産加工食品など他事業を拡大してきた。2006年に業界首位のマルハグループ本社と3位のニチロが統合を発表した当時も、両社とも事業多角化を進める途上で、多大な負債を抱え、苦しんでいた。
旧マルハは97年から06年までの10年間に、累計1611億円もの特別損失を計上。本社ビルや球団事業を売却してそのための原資を捻出した。旧ニチロも主力の久里浜工場を売却するなどリストラに追われた。10年間の最終利益の合計はマルハが52億円、ニチロが53億円というありさまだった。
業界再編などによる大手小売りのさらなる強大化で価格決定権がメーカーから小売りに移り、収益性が徐々に低下する中、マルハとニチロは、生き残りを懸けて統合を決断したのだった。
事業ポートフォリオでは、“理想的な結婚”だった。水産が強いマルハ、食品が強いニチロは事業の重複がほとんどなかった。
水産事業では、実際に魚を捕る漁労事業、養殖事業、魚の買い付け販売を行う水産商事事業、国内の中央卸売市場での流通を行う荷受事業など、上流から下流まで幅広い事業を持つ。さらに北米およびニュージーランドで外国籍としては唯一の自社船とスケソウダラなどの権益を持つほか、取り扱い魚種数も同業他社や商社と比べて圧倒的に多い。取扱高は国内40%のシェアを握る養殖クロマグロのほか、カンパチ、ブリ、エビなどの主要魚種でトップシェアだ。